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エルシド様、誕生日おめでとうでした!
一年ぶりのSS更新になってしまいました。しかも同じく誕生日話で。
そしてまたしても大変遅くなって申し訳ありません! なんとか山羊座月間に…。
エルシドとアスミタ。
アスミタのほかに、エルシドもハクレイさんが拾ってきたという手代木先生の設定メモからの捏造過去「黄金の光」の続き的なもの。アスミタは外伝でほぼ確定しましたが…。
オリキャラは出ません。
改めて、昨年の「12月27日」への多数の拍手ありがとうございました!
年も押し詰まる日。エルシドは一人で修行を続けていた。
フェルサーが去り、峰が死んだ。フェルサーはもう戦えなくなっていたし、峰はもともと修行の相手ではなかった。精神的な意味での『好敵手』であったとしても。一人でも修行はできるし、二人がいた時もことさらたくさん話をしていたわけではなかった。だから別に困ることなど何もなかった。困ることなど、何も。
一日の修行を終えてエルシドは水場で顔を洗っていた。洗い終わって帰ろうと振り向いたとき、すぐそばに金髪の少年が座っているのを見てぎょっとした。全く気配に気づかずにいた己に内心舌打ちしたが、こうして面と向かっていても少年の気配がほとんど感じられないのに気づき、エルシドははっとした。実体ではない…?
この少年には見覚えがあった。いつぞやジャミールの族長ハクレイに連れられていったインドで会った少年だ。今はジャミールで修行していると聞いた。
「…アスミタ?」
問うた声は喉に引っかかるように少しかすれた。そう言えば、声を出して人と話すのはいつ以来だったか。
「貴方は…エルシドか。ではここは…」
アスミタはあたりを見渡すように顔を上げ、場所を確認したようにうなずいたが、その目は閉じられたままだった。
「なぜ、ここに来た?」
エルシドがいぶかしげに言うと、アスミタは首を傾げた。
「さあ…。私がいつものように神仏と対話しながら瞑想していたら、ハクレイ殿にたまには気分を変えてこいと飛ばされたのだ」
「また、あの人は…」
こことジャミールはかなりの距離がある。いや『かなり』なんてものじゃない。サイコキネシスに長けたハクレイならではの力業だが、魂だけとはいえ、何でもないかのようにしているこの少年もなかなかのものなのだろう。
「ここは静かなところだな」
「ああ」
遠くに聞こえる鳥の声と、風にそよぐ木々の葉のざわめき以外、ここしばらくは聞いていなかった。
「余計なことかもしれぬが、貴方も時折は人里に降りて他人と話し、まともに食事をした方が良いのではないか?」
突然の言葉にエルシドはとまどった。
「そんなにひどく見えるのか?」
言ってから、相手は目が見えないのを思い出したが、アスミタは肯定のうなずきを返した。
「貴方の『気』は以前見たときよりくすんでいるように見える。ここの気配は死んでいるように滞っている。何か辛いことがあったのではないのか」
別に何も、と否定しようとして、できないのに気づいた。困ることは何もなかった。だが、ああ、俺は辛かったのか。
「…そうだな」
大きく息を吐いてエルシドが認めると、アスミタは微かに笑んで言った。
「なに、私もよく似たようなことを言われるのでね」
誰に?とエルシドが思っていると、アスミタはふと遠くの物音を聞くような表情をしたと思うと手を差し上げ、指さした。エルシドは手を出し、突如虚空から現れたものを受け止めた。金の入った小袋のようだった。
「貴方は今日が誕生日だそうだな。それでたまには人心地つくようなものを食べろとのハクレイ殿の伝言だ」
「また、あの人は…」
エルシドは今日二度目の苦笑を漏らした。
「申し訳ないがこの状態ではお相伴できない。残念ながらそろそろお暇しよう」
「ああ、そうだな。気をつけて帰れ」
アスミタは一礼して合掌した。
「貴方の生まれた日に祝福を」
そして少年の姿は虚空に溶けて消えた。
「…ありがとう」
エルシドは誰もいなくなった空間につぶやいた。
里でしか手に入らない物がだいぶ減っていたな。久しぶりに出かけるか。いつまでも止まっているわけにはいかない。そろそろ新たに動き出さねば。この新しく年を刻む日に。
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アスミタは仏像(神仏?)にも食事しろと心配されてたよね…。
エルシドは指摘されないと自分の心情に気づかなかったりするときがあるのでは?とか思って。
なんかあまりおめでたい感じの話にならなかったけど、一年ぶりの誕生日お祝い話です。
毎年大変遅くなって、申し訳ありません!
この調子で黄金聖闘士だけでもあと9年はお祝いできるか !?
改めて、エルシド様お誕生日おめでとうございます!
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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