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試合が終わった。会場を出て、一人一人、自分の家へと向かう駅をさして別れていく。気づくとティソナはエルシドと二人になっていた。思わぬ機会に胸がどきどきする。公園を通りかかった。外側の道を回るより中を突っ切った方が速いので、二人は公園に入った。夕方の公園は人気がない。
ティソナが立ち止まった。少し前を歩いていたエルシドは、いぶかしげに足を止めて振り返った。ティソナはうつむきながら、小さな声で言う。
「あの、私…先輩を…私…私、先輩が好きです」
突然の告白にエルシドは目を瞠った。いつも熱心に稽古に励むひたむきな姿。それは常々好ましく思っていた。だが幼馴染で同学年のラカーユと仲が良かったから、てっきり――。
「俺でいいのか?」思わず、そんな言葉が出た。
ティソナはきっと顔を上げた。真っ直ぐ見つめてくるその瞳。
「先輩じゃなきゃ駄目なんです! ずっと…先輩が好きでした」
そんなストレートな物言いが心に響く。おとなしそうでいながら芯の強い小柄な少女。自分とは無縁のものと思っていたのに。
「俺でいいのか」
先程と同じセリフ。けれど込められた思いが違う。ティソナの張り詰めていた顔に、信じられない、という表情が浮かぶ。そして、まるで花が開くように満面に喜びが広がるのを見て、嬉しく感じる。
「…はい」
エルシドが身をかがめる。二人の顔が重なる――。
いつもは別れる駅。
「家まで送ろう」
エルシドはティソナと同じ方向へ角を曲がった。すっと道路側に寄る。黙って歩いていても、そんな心遣いがすごく嬉しい。
家の前に着いた。気づくともう暗くなっていた。
「じゃあ…」
「ああ。また明日」
背の高いエルシドが体をかがめる。さっと唇を掠めるキス。ほんの少しだけ照れくさそうに微笑んで、エルシドはティソナのそばを離れていった。夕闇の中、顔を赤くしたティソナはその後ろ姿を見送った。
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中高生だからまだキス止まりね! 高二と中三くらい。聖闘士の場合より三歳くらい若い?
ずっと付き合って、ティソナが大学を卒業した後に結婚するんだよ、きっと。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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