「12月27日」

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エルシド様、誕生日おめでとうでした！
大変遅くなって申し訳ありません！　もはや山羊座月間ですらないよ…

エルシドとマニゴルドのバトル小話。
オリキャラは出ません。

「11月13日」への拍手ありがとうございました！
  

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　その男の走り方は普通ではなかった。速さもさることながら、走り方がおかしかった。それもそのはず、その体はすでに死びとのもの、その体を動かしているのは冥界に属するやからだったからだ。
　山羊座の聖闘士エルシドは慎重に距離を取って追っていた。任務の帰り、思わぬところで異様な小宇宙と同僚のなじみ深い小宇宙を感じたのだった。
　めちゃくちゃに走っているように見えて、その実、男には目的地があるようだった。こうして追い始めてからもうかなりの時間になる。真っ暗だった空が次第に白んできていた。
　ようやく男は走るのをやめた。何やら深い亀裂の縁にそろそろと近づいていく。底は見えない。
「おっと、そのままで行ってもらうわけにはいかねェな」
　男はのろりと頭を、その声の聞こえた方へ、そこで待ち伏せていた蟹座の聖闘士マニゴルドの方へ振り向けた。
「いくつ持ってんだか知らねェが、ほかの魂は放してもらおうか。魂は正しく送ってやらねェとな。積尸気冥界波！」
　マニゴルドが指を突きつけると、男の体から複数の魂が飛び出した。魂たちは亀裂に吸い込まれていく。どうやらここは冥界に続いているようだ。
　最後に飛び出した魂は逡巡するように漂ったあと、出てきた体に戻ろうとした。
「もうその器は使えんぞ」
　追いついていたエルシドが腕を振るうと、男の体はバラバラになった。と思うと、結びつけていた何かがほどけたように、その体はぐずぐずと崩れて原形をとどめない塊になった。
　戻るところを失った魂は、向きを変えて亀裂に飛び込もうとした。
「テメェはただで返してやるわけにはいかねェな。積尸気鬼蒼焔！」
　魂は空中で青白い炎をあげ、わずかに身をよじるように見えたと思うと燃え尽きた。名も知れぬ冥闘士の雑兵の魂。それでも現世で多くの魂を狩り集めていたのだ。それを手土産に冥界での出世でも狙っていたのか。もはや理由はさだかではないが。

「ちょうどお前が通りかかってくれて助かったぜ」
「ああ」
　マニゴルドは少し前からあの男を追っていたという。
「しかしやれやれ、手こずらせやがって…夜が明けちまったじゃねえか」
　明るくなっていた山の端から曙光が差してきていた。
「では戻るか」
「まあ待ちなって。お前、今日誕生日だろ。おめでとさん」
　エルシドは肩をすくめた。ああ、そうだったか。別にこれといった感慨はなかった。
「そっけないねえ。俺たちがこうして今生きているのはすごい奇跡かもしれないんだぜ？」
「別にそんなことは…」
　言いさして、エルシドはふと口をつぐんだ。そうだ、今の俺の、この年まで生きられなかった者もいるのだ。戦いで、事故で、病いで。
「いや、そうだな」
「というわけで、もしお前に会ったら祝いに少しはうまいものでも食って来いとの上からのお達しだ。心配するな、軍資金もちゃんともらってある。もっとさっさと済ませて前祝いにするつもりだったが、思いのほか長引いたからちょうど当日になっちまった。お前の方もてこずってたのか？」
「たいしたことはない」
　確かに、こちらの任務ももう少し早く終わると思っていたのだが。
「じゃあ行こうぜ」
「ふん。お前のことだ、どうせもう目星はつけてあるのだろう？」
　マニゴルドはにやりと笑った。
「任せろ」
　聖闘士は戦いが宿命。それは小宇宙を、命を燃やす日々。その日々を与えられたことを感謝しよう。今日というこの日に。

 

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黄金二人の共同任務にしては敵がしょぼい気がしたので、マニゴルドの任務にエルシドが行きあったことにしてみました。
まだ誕生日がわからないとき、山羊誕企画にマニゴルドとの共闘話を出させていただきましたっけ…それがもう6年も前とは驚きです。読み返すとおんなじような話ですみません…。

改めて、エルシド様お誕生日おめでとうございます！
大変遅くなって、しかもこの程度の話で、申し訳ありませんでした！