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―KEN NO CHIKAI― since 2010.10.23
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Posted by MCBT - 2011.10.23,Sun
※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

エルシドとマニゴルドとアルバフィカ。
オリキャラは出ません。

「人の道」 への拍手、ありがとうございました!

一周年記念、LC年中組共闘バトル!
 


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---


 教皇の間にマニゴルドとエルシドが呼ばれた。任務の説明が一通り終わったあと、
「ああ、今回は彼にも共に行ってもらおうと思う」
 アルバフィカが教皇の間に入ってきた。
「では、お前たち、頼んだぞ」

「ったく、黄金が三人も出張るような任務なのか?」
「あの地は聖域にとって重要な場所だ。教皇様としても、聖戦が激しくなる前に憂いは払拭しておかれたいのだろう」
 マニゴルドに答えるアルバフィカの方にエルシドは顔を向けた。
「で、お前が出るような理由とは?」
「あの地に起こっている病…どうやら誰かが毒を使っているらしい」
「毒ならお前の管轄か」
「そういうことだ」
「幽霊騒ぎに化け物に毒、か。確かに俺らに似合いの仕事だな」
 マニゴルドは軽く言ってのけたが、起こっていることは決して軽微なものではなかった。

 聖域からほど遠からぬ場所にある街。そう大きな街ではないが、そこには魔を抑える女神の封印があった。報告によると、その封印が何者かによって破られたらしく、多くの怪異現象が見られていた。恐怖のあまりの単なる噂もあろうが、実際に人的被害が近隣の地域にも広がってきていた。先日様子を探りに行った青銅聖闘士も戻ってきていない。
「さあて、と。お出でなすったか?」
 人気がないように見えた街の中から、ふいに吹き出した生臭い風に押されるように、ふらふらと幾人かの人影が現れた。だが歩き方がおかしい。
「あれか、『幽霊』と言われたやつは?」
 エルシドが目を細めた。
「んじゃ、まずは積尸気冥界波っと!」
 マニゴルドが右手の人差し指を立てると、その指先に引き込まれるように魂が抜けていき人影はばたばたと倒れ、消滅していく。だが。
「ああ? 案外残ってるなあ」
 マニゴルドはなおも進んでくる人々を見て眉をしかめた。口をあけ、餓えたような表情を浮かべているその姿。それらが一斉に飛びかかってきた。
「おおっとお」マニゴルドは一歩下がると、「アクベンス!」襲ってきた一人を一蹴する。
 エルシドが腕を振るって他の者たちを斬り捨て、
「ピラニアンローズ!」アルバフィカも黒薔薇を放って何体かを足止めする。
「ただの死霊じゃないってわけか…中途半端に魂と命が残ってやがる。人に喰らいついていたってのはこいつらか。しょうがねえ。積尸気鬼蒼焔!」
 マニゴルドが放つ蒼白い炎が残った者たちにとりつき燃え始める。
「何だか面倒な術使いがいるみてぇだな」

「他にも妙な化け物が出てるって話だったな」
「ああ」
 エルシドがマニゴルドに返事をしながら角を曲がると、ちょっとした広場のようなところに出た。
「げっ…」
 広場には多くの人が集まっていた。いや、かつては人であったもの、か。大部分の者はすでにまっとうな人の姿をしていなかった。腕や顔、上半身が獣と化し、下半身にかろうじて服の名残が残っている者がほとんどだ。なかには全身獣と化した四つん這いのものもいた。それがただの獣でないことは、普通では存在しないはずの異様なその姿にあった。そして『人間』の姿に向ける剣呑な羨望の眼差し。じりっとその者たちが間合いを詰めて飛びかかろうと身構えた刹那。
 エルシドが右腕を一閃させた。最前列にいた人狼まがいの者たちが肉体を貫かれて倒れる。続けて振るわれた二閃目で、その後ろにいた者たちの大部分が倒れる。わずかに残った者たちが路地に逃げ込んでいく。
「なんだあ、こいつらは?」
「先程の幽鬼めいた者とはまた違う感じだが、やはり何かの術か」
 マニゴルドの言葉にエルシドが答えていると、先刻逃げた者たちが、新手と共に戻ってきた。また人数が増えている。腐臭の混じったような風が吹いてくる。人体の形状をとどめていないだけでなく、もはや動物とも言えないような、崩れた体形の者も混じっている。エルシドは前に踏み出すと、右腕を振るった。地を走る斬撃に、一閃ごとに数体ずつが薙ぎ倒されていく。辺りの建物も一緒に倒れ、広場の空間が広がって見通しが良くなってくると、建物の陰に隠れていた者の姿が露になる。図体が異様に大きな者の中は、自分で建物を倒してやってくる者もいる。エルシドは跳びあがって建物の屋根から、その大きな姿に蹴りかかった。
「ジャンピングストーン!」
 地面に降り立つと、倒れる姿には目もくれず、路地から次々に出てくる者たちを、表情も変えずに斬り伏せていった。
 ようやく襲ってくる者が絶えた。アルバフィカがため息をついて言った。
「何にしても元を断たないといけないな」

 とある廃屋に見える家の前で、アルバフィカは足を止めた。
「お前たちは先に行っていてくれ」
 他の二人にそう言うと、その家に入っていった。
「あら、おかしいわ、見つからないはずだったなのに」
「わずかに毒の香気がもれていたからな。私はごまかせん」
「でもちょっと遅かったわね」
 アルバフィカが踏み入った家にいた女は、顔を上げ艶然と微笑んだ。それほど年寄りではないが、どこか歪んだ印象を与える顔の女だった。家の中には甘い、だがどこか腐ったような香りが漂っていた。
「これは…」
「この街に残っているのは病でもう幾許もなかった人たちよ。でももっと生きたいと思う人ばかり。だから私の薬で『助けて』あげたの。人によって効果は違うわ。生きながら幽鬼になったり、体が変化して獣人になったり。生命力の弱い者はどうしようもないのでここにいたけど…先ほど全員に『安眠薬』をあげたの」
「そんなものは…どれも薬じゃない! ただの毒だ! いやただの毒どころか…もっとたちが悪い」
「あら、みんなただ苦しむよりはと喜んで受け取ったわよ」
「黙れ…!」
 アルバフィカはぎりっと唇を噛みしめた。「そもそもの『病』もお前が作り出したものではないのか」
「察しがいいわねえ。だってこの街の人は流れの薬師に冷たかったんですもの。具合が悪くなると頼ってくるくせに」
「だからといって…」
「そういう偉そうなきれいな顔も大嫌い。あなたにも差し上げるわ。ほら」
 女はすっと自分の顔にベールをかけると手を振り上げ、空中に何かを撒いた。部屋の中の甘い香りが強くなる。
「これで眠ってちょうだい。永遠に」
 女は笑い声を上げた。自分勝手な理屈を吐く、狂った笑いだった。
 ふと女は眉を寄せて顔を上げた。部屋の中にいつの間にか薄赤い霧が立ち込めていた。
「ちょっと、これ…」
 口を開きかけた女は、突然体を二つに折って血を吐いた。「何…」
「お前の『薬』よりもよく効くだろう。クリムゾンソーン!」
 血の針を打ち込むと、アルバフィカはもう女に一瞥もくれずにそこを後にした。

「首尾はどうだ?」
 アルバフィカが出てくると入り口の近くにいたエルシドが聞いた。
「ああ、多分元凶はつぶしたと思う」
「では残るは後始末だな」
 まだ多くの人影がこちらに向かってくる。一度変質させられた肉体は、元には戻せないようだ。行方不明だった青銅聖闘士と思しき姿も見える。
「やれやれ、さっさと片付けようぜ」
 マニゴルドは指をかかげ、エルシドは腕を構え、アルバフィカは黒薔薇を持った腕を引いた。

 街はずれには破られた封印石が立っていた。
「お前の言っていた奴がこいつを破壊したのか?」
「いや、そうではないと思う。この封印は先代よりさらに古い封印のようだ。何かの弾みで剥がれた封印から発する気を、自らの術に悪用したのだろう」
 虐げられた流れの薬師の女。世の中への恨みから、妖しい魔の気を察したとき、おそらく生来持っていた癒しの術を曲げて使うようになったのだろう。
「ふうーん。ま、とにかくやばいものは抑えとかないとな」
 マニゴルドは教皇から預かった女神の封印の札をその石に貼った。札は一瞬光り輝き、辺りに浄化の風を放った。

「お前もいい加減、技名を決めろよ。タイミングが取りにくいじゃないかよ」
 エルシドはチラリとマニゴルドを見たが、肩をすくめて無言を通した。
「人それぞれだ。別に構わんだろう」
 アルバフィカがとりなす。
「やれやれ。ま、無事に終わったから別にいいけどよ」
「そうだな。ああ、いい風だ」
 ふと吹いてきた風に、アルバフィカは顔を上げた。マニゴルドとエルシドも天を振り仰いだ。先ほどまでと打って変わった爽やかな風を、三人はしばらく味わっていた。
 聖戦が激化する前の、良き風の一日。


---


一周年記念に景気のいい話をと思ってバトルものにしてみましたが、うまく書けているかどうか。
ちょっと血生臭い…というかグロテスクか?
アルバフィカが主役っぽいぞ。エルシドが地味だ。多分一番、数倒してるはずなんだけど。
台詞、どれが誰の台詞かわかりますでしょうか? マニゴルドは書きやすいのですが。

年中組話第2弾?
黄金三人共闘なんてありえない気もしますが、そこはドリームですから。
いやなんか無印でやれって気もしますが。
 

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MCBT
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非公開
自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

何かありましたら
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