ラスク話その3。アニメ設定を踏まえての過去捏造。
オリキャラは出ません。
後書きにTVアニメ「Ω」、LC外伝についてなど(2012.11.12追記あり)。
今週末はロスキャンオンリー、来週はパラ銀です。出展される方、楽しみにしておりますよ!
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僕だけ年が離れてる。僕だけが青銅だ。僕は本当に役に立てるのか。それでも精一杯やろう。僕は聖闘士だから。エルシド様の部下として恥ずかしくないように。
ラスクはたくさんいるきょうだいの末っ子だった。明るく元気な子どもだったが、特技があった。
「あ、今年初めてのツバメ!」
「よく見えるなあ、お前」
「へへっ」
ラスクは小さいころから目が良く、遠くのものや素早く飛ぶ鳥を見分けるのが得意だった。そして、人一倍勘のいい子どもでもあった。知らないところへ行くときもめったに道を間違えなかったし、楽そうな道でもこの子が「そっちの道は駄目だよ」と言ったときに無理に行くと、崖崩れがあってかえって遠回りだったり、行き止まりで引き返す羽目になったりするのだった。そしてまだ小さなこの子が「それはやらない方がいいよ」ということをすると、たいてい後で何か良くないことが起こったりした。そんなことが重なって、目がいいのを感心されて一目置かれる状態から、周囲の人から「ちょっと不思議な子」としてやや距離を置かれる状態になってきたころ、両親が聖域のことを話しているのを聞いたのだった。
「僕、そこへ行ってみる」
ラスクは屈託なさそうに笑って言った。幼いながら、自分は家を出るべきだと何となく思ったのだ。単純に子沢山の家の食い扶持を減らして両親に少しでも楽をさせたいという気持ちもあったが、自分が感じていた「何か」をもっと思い切り使ってみたかったこともあった。
聖域では新しいことばかりだったが、幼い少年の心の順応は早かった。自分の感じていた「何か」が、「小宇宙」というものだということがわかると、その小宇宙を燃やせるようになるのも早かった。あまり早くなかったのは体の鍛錬の方だった。ラスクはそれまで特に体を鍛えたりはしていなかった。人懐こい子で誰とでもすぐ仲良くなるので、喧嘩で鍛えて育ったということもなかった。まず基礎体力をつけることから始めねばならず、初めは同じころ聖域に来た者たちに後れを取った。相手の技を見切ることや構えから読み取ることは得意だったが、頭でわかることに体が追いつかないのだった。それでも体が反応できるようになると、その遅れを返上し、ラスクは同期―大部分は年上―の候補生の中で頭角を現していった。
エルシドを初めて見かけたのはそんなころだった。寝つかれないでいたある晩、ふらりと出て行った聖域のはずれ。ふと目にした、夜目にも鮮やかな、黄金の小宇宙。水辺に立ってじっと集中している姿にただならぬ気配を感じ、物陰から息を潜めて見つめていると、エルシドが腕を一閃、発せられた黄金の光が水を割り、向こう岸近くまで届いた。
「…すごい」
ラスクは息を呑んだが、エルシドは技を放ち続けた。何度目かで遂に向こう岸まで一気に届くようになると、ようやく満足したかのように構えていた腕を下ろした。
エルシドは十二宮の方へ戻るのか歩き出した。ラスクが隠れていた茂みのそばを通ったとき、足を止めずに口を開いた。
「こんな時間に何をしている。聖闘士は体が資本だ。休むべきときにはきちんと休め」
気づかれていた…。ラスクは首をすくめた。
そんなことがあってから、ラスクは時折見かけるエルシドの修行を見るのが楽しみになった。自分とは全然違うけれど、圧倒的なその小宇宙の放つ技に見惚れた。あるときツバキと鉢合わせて、自分と同じように熱心にエルシドの修行を見つめている者がいることを知った。そこに間もなくラカーユも加わった。二人とも年は上だったが、エルシドについて語るときは同レベルで話ができた。
やがてラスクは聖闘士になった。
「おめでとう、やったじゃないか」
「これでお前も一人前だな」
すでに聖闘士になっていたラカーユとツバキが祝福してくれた。階級は違うが、二人の星座とは関係がある。それも少し嬉しかった。
「ありがとう…僕もエルシド様の部下になれるかな。青銅だけど」
「もちろんなれるさ。エルシド様はそんなことで分け隔てはなさらないぞ」
「お前がなれるくらいだからな、ラカーユ」
「どういう意味だよ」
揶揄するように言うツバキに、ラカーユがふくれて突っかかる。
「ラスクに才能があるのはお前だって知ってるだろう。まだ14歳になったばかりだというのに聖闘士になったんだ。いくら幼い頃から修行を始めていたと言ってもな」
「ああ、そうだな」
候補生も同行していく任務で、ラスクはしばしばその索敵の正確さを買われて重宝されていた。ラスクが敵がいると示す方向には、ほぼ間違いがなかったからだ。
「でも僕、実戦では戦ったことほとんどないんだ。ちょっと怖いし」
候補生の斥候は実際の敵が現れる前に引かされていた。
「大丈夫だ、そのうち慣れるさ」
少し不安そうに言うラスクに、ラカーユは明るく言った。
「俺たちの戦いはこれからだからな」
ツバキが言うのへ、ラスクはうなずいた。
僕だけ年が離れてる。僕だけが青銅だ。僕は本当に役に立てるのか。それでも精一杯やろう。僕は聖闘士だから。エルシド様の部下として恥ずかしくないように。
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ラスクは部下の中では一人だけ書いた話数が少なく、もう一つくらい書こうかなあとずっと思ってはいました。
我が家設定でも一人だけ若いので、その若さで聖闘士になるのは才能があって優秀なんじゃないの?というところから。それがうまく書けているかどうか。アニメによると実戦経験は乏しそうです(他の二人もそうなのかもしれないけど)。
原作漫画の初出のときの台詞から目が良さそうというのと、アニメの羅針盤座という設定から「正しい道筋」を示す、という感じに考えてみました。
ところでエルシド様、貴方はもう大人だから夜更かししててもいいんですか?
三人はこれではエルシドのストーカー…いやエルシド様は気にしないだろうけど、アニメの三人は十分うざいです(笑)。
この設定だと、年齢を考えるとラカーユが聖域に来たのはラスクより後かもしれません。え、そうするとラカーユのほうが聖闘士として才能ある?
ラカーユと言えば、ガタイが良くて傷痕がいっぱいある親父さんの前歴が気になります。傭兵上がりとかなのか?
ラスクは原作漫画ではろくにしゃべっている暇がありませんでしたが、アニメ19話では一人称は「僕」でした。
22話で階級の違う他の二人に敬語になっちゃうのが、ちょっと引っかかるんですけどね。
ツバキとラカーユは白銀でラスクは青銅だけど、三人ともアルゴ座を構成する星座なんですよね。なんで一人だけ青銅なんでしょうね。恐らくはパキアがなるはずだった竜骨座はどっちだったのでしょうか(映画「真紅の少年伝説」では「コロナの聖闘士」だし)。
アニメ設定を踏まえてといっても、パキアくんはあえて入れませんでした。パキアくんを入れても、うちのヒロインを入れても、どちらでも問題ないようにしてみたつもりです。
「Ω」では、貴鬼が遂に牡羊座の黄金聖闘士として出ました。一人称も「おいら」から「わたし」になって、「見くびるな」とか言って、立派になったねえ~。
牡牛座が男前でびっくりです。柄は悪くなったけど。でも根っからの悪人ではないような。
憎しみの双子座様と蟹座がいい感じの「悪役」で楽しいです。美形だから見ているだけでも楽しいし。
しかし新OPの歌手の皆さん、せっかくイケメンなんだから、もうちょっと格好いい芸名にすればいいのに。
レグルス外伝は2回目。「Ω」は隕石落下でいろいろ変わったことになっているけど、LC外伝の異世界感を見ると正統派な感じがします。いや、LC外伝はこれはこれで楽しいですよ。展開が読めないし。シジフォスが叔父馬鹿だー。ファリニシュさん、只者じゃない気がする。
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2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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