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Posted by MCBT - 2012.09.14,Fri
※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

「十二宮で12のお題」の現代編第2回。ムウ編。
この前に出した「「継承」―白羊宮」の後編のようなもの。前回に引き続きいろいろ捏造しています。
オリキャラは出ません。

一応LCを知らなくても読めるように書いたつもりですが、ちゃんと書けているかどうか。
後書きで、エピG、テレビアニメ「Ω」関連の話もちょっとしています。
 
 


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---


 牡羊座の聖衣を求める候補生が他にいないわけではなかった。しかしこのところ、間もなく起こるであろう聖戦に備えて、教皇は若くとも優れた者を聖闘士となし、まだ幼い者たちも次々とその候補生としていた。教皇自らが弟子にした少年も、天才的な力を備えていることがすぐ明らかになり、牡羊座の聖衣はその少年のものとなったのだ。教皇を拙速だと思う者がいないわけではなかったが、聖闘士、特に黄金聖闘士となった少年たちは、確かに抜きん出た力を持つ者たちだった。今はまだ幼くとも、数年もすれば心・技・体とも充実した、名実ともに素晴らしい闘士となるだろうと思われた。
「何か欲しいものはないか?」
 牡羊座の聖衣を勝ち取ってきたムウはわずかに目を瞠った。いつも大変厳しい人なのだが、今日の師は上機嫌のようだった。
「では…それをいただけますか」
「なに?」
 シオンはムウが指差した、手でもてあそんでいたものに目を落とした。手すさびに聖衣の欠片で作った珠だった。丸く磨かれたそれは、光を受けて聖衣さながらの美しい輝きを放っていた。
「こんなもので良いのか?」
「はい。それは、よく師が手入れしていらっしゃいますよね。とてもきれいでいつも好きだったんです」
 きれいなおもちゃを欲しがるとは、ムウもまだ年相応の子どもだったということか。
「お前が黄金聖闘士になった祝いだ。もっとねだっても良いのだぞ?」
「そうですか…でもちょっと思いつかなくて」
 ムウは少し困ったように言った。そういえば、ムウはおねだりなどする子どもではなかったな。
「では何か思いついたら言うが良い。わたしにやれるものなら何とかしよう」
 ムウはまたちょっと目を見開いた。わたしは師が大事そうにしているこれが本当に欲しかったのだけど。でも師が喜んでくれるのは嬉しい。
「はい!」
 ムウはめったに見せない満面の笑顔で答えた。シオンもそんなムウにを見て微笑んだ。めったに見せぬ微笑で。

 何かがはじけて消えた。ムウは目を覚ました。何が起きたのか、すぐにはわからなかった。何かがなくなっていた。大切な何かが。ムウは白羊宮の入口を飛び出し遥か上の、教皇の間の方を見上げた。そこには何も感じられない。スターヒルにいるのかもしれない。このところよく星見をしていたから。そちらの方には確かに何か強い小宇宙が感じられた。誰のものか特定しようとしたとき、その小宇宙はふっと消えた。感知されるのを避けるように。
「我が師シオン…?」
 一瞬、スターヒルに師の小宇宙が感じられた気がした。だが今はただ空虚が感じられるだけだった。違和感があるほどに。
 ここにいてはいけない。本能的にそう思った。ムウは白羊宮の中にとって返し、先日拝領したばかりの牡羊座の聖衣箱を肩に担いだ。子どもの身にはいささか余る聖衣箱だが、サイコキネシスの使えるムウにはそれほど大変なものではない。聖衣修復の道具はほとんどふだん修行しているジャミールに置いてある。他に持っていくべきものはここにはほとんどなかった。ムウは部屋を見回した。机の上に、先日もらった珠が置いてあるのが目に入った。ムウはそれをつかんで服の物入れに突っ込むと、十二宮の石段を駆け下りた。第一宮である白羊宮からは、十二宮を出るのはすぐだった。十二宮の中ではできないテレポーテイションで、ムウは一気にジャミールに飛んだ。ジャミールに着いてから、ムウは何度も聖域の方を探った。研ぎ澄ませば、黄金聖闘士の小宇宙は聖域までも届く。だが何度探っても、師シオンの小宇宙は感じ取れなかった。「教皇」がいるのはわかった。だがそこに感じられる気配、ムウにはそれが師シオンのものとは思えなかった。黄金聖闘士になったとはいえ、まだ年若い身、聖衣を得てから改めて修行に発っていった者もいる。ムウも聖衣修復の技を磨くためと称し、のちには聖衣の修復調整のため多忙と称し、十三年の間、一度も聖域に戻らなかった。
 だが聖域には行かずとも、できることはある。

 身寄りのなくなったその子どもは、泣きじゃくりながら、時折抑えきれないサイコキネシスの力をあたりに放っていた。一族の者にはときどき出る異能の力だ。ムウが呼ばれたのは、同じ力を持つ者として、それを抑えるためでもあった。
 子どもの気持ちはなかなか治まらなかった。二の腕にはめた、まだこの子には大きすぎる腕輪が痛々しい。ふと思いついて、ムウは昔シオンからもらった珠を子どもに見せてみた。師がおそらくはちょっとした気まぐれで、聖衣の欠片で作って滑らかに磨き上げたものだった。あのときは単に、師が自ら作ったきれいなものが欲しかっただけだったのだけど。形見になるとも思わずに。聖域から、聖衣とともに持ってきた数少ないものの一つ。
「ほら、きれいでしょう?」
 その子ども、貴鬼はいたずらっ子だったが、細工物の好きな子だった。不思議な輝きを放つその珠に、思わず泣くのを忘れて見入っていた。その眼差しを見て、ムウは言った。
「気に入ったのなら、あげます」
「いいの?」
 貴鬼は嬉しそうに、それでもびっくりしたようにこちらを見上げた。
「ええ」
 ムウはうなずいた。我が師も弟子の子どもを喜ばせるものとして作ったのだろうか。弟子の子ども、わたしのために? ムウは息を吸いこんで、しばし瞑目した。そして目を開け、口を開いた。
「わたしのところに来ますか?」

 まだ鼻をすすりながらも、貴鬼はそれでもしっかりと歩いていた。わたしのときもこんなだったのだろうか。ムウは貴鬼の手を引いて歩きながら思った。自分では覚えてはいなかった。同じくらいの年だったはずだが。
 貴鬼はすぐムウとの生活になじんだ。いたずらもするが、素直な良い子だった。実のところ、ムウは貴鬼を連れてきた自分の行動に驚いていた。自分は間違っても子ども好きなタイプではないと思っていたからだ。だが、元気な貴鬼を見ていると、ムウは自分の心の中の、どこか凍りついていた部分が癒されていくような気がした。我が師シオンもこのように感じたのだろうか。長い生涯を経てから後継者を得た師と自分の立場は違うだろうが。
 思った通り、貴鬼は修復の技に大変興味を示した。先のことはどうなるかは不透明だ。だがわたしの継いだ技だけは、この子にすべて伝えておこう。この子には少々厳しくなるかもしれないが、仕方あるまい。わたしが再び聖衣をまとい、ここを去る日はそう遠くはないだろうから。
 その日に間に合うために。次代へと、継いでゆくために。


---


シオン様を急ぎすぎ、と思う人もいたのじゃないかなあ。「遅くとも十年ののちには必ず聖戦が起きる」って言ってたけど、結果的にハーデスとの聖戦は13年後だったんだよね。

ムウ様が聖衣をもらったのはどんなシチュエーションだったのか、シオン様が死んだときムウ様はどこにいたのか、そしてそれからの十三年間、ムウ様は何を考えて生きていたのか。いろいろ気になります。いろいろな方々のお話が脳裏に浮かびます。それらにはとうてい敵わない気がしますが、末席を汚すことをお許しください。

ムウ様は貴鬼に聖闘士としての修行はしていたのだろうか。修復師としての技は伝えていたみたいだったけど。Ωで今後明らかになるかなあ。貴鬼はあの腕輪をまだしているんだろうか。羅喜ちゃんに譲った?

参考のためいろいろ見ていたら、エピGでは、雑兵は十二宮の中で馬に乗ってました。星矢界で乗馬って新鮮ですよね…(と思っていたら某一角獣座が馬に乗りやがった。あんた、自分が馬だろ!)

魚座編がしょぼかった気がしてきました。書き直せたら差し替えるかも。
次回、どこの宮になるかは未定です。
 
 

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非公開
自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

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