原作外伝・アニメ設定の部下話。
なので、うちの部下設定・今までの部下話とは若干異なるところがあるかと思います。
主にラカーユ、+ツバキ。
オリキャラは出ません。
新作テレビアニメ「Ω」とLC外伝については後書きに。
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聖闘士の修行は覚悟していた以上に厳しいものだった。まさに「常人には耐えられん程」だ。それに耐えて何とか続けていられたのは、エルシドにした約束があったからだった。もう家に帰るわけにはいかないという事情もある。父親には鍛冶屋を継ぐ才能が全くないと明言されてしまっていた。
そして幸いにも、自分には何がしかの素質があったらしく、小宇宙に目覚めることができた。あのカタラニアで多少いろいろな気配を感じていたのは、その現われだったようだ。
「エルシドさんの気配なんか、鋭い刃みたいに感じられたもんなー」
「エルシド『様』だ」
独り言のつもりだったが、耳ざとく聞きつけたツバキがじろりとこちらを睨む。ツバキが修行仲間、聖闘士の候補生として自分より一日の長があるのは認めるが、まったくこいつは口うるさい。ツバキはエルシドに心酔していた。おそらくこの男も、どこかでエルシドの技を見たのだろう。カタラニアからエルシドが戻ってきたとき、ツバキはくっついてきたラカーユに、大層胡散臭げな目を投げかけてきたものだった。さりげなく、だが何度も、カタラニアでどんなことがあったかを聞いてきたことで、エルシドの実戦を目の当たりにしてきたラカーユを、歯噛みするほどうらやましく思っていたらしいことは後に知れた。自分の方は何故エルシドに思い入れすることになったのかは決して話さないのにだ。だが普段は口の軽いラカーユも、あまり多くは語らなかった。自分だけが知っていることとして出し惜しみしたい気持ちもないではなかったが、あの一件はエルシドの過去―恐らくは辛い記憶を含む―と密接に関係があったため、軽々しく口にしてはいけない気がした。今はまだ。
ツバキに言われずとも、聖域に来てみて、黄金聖闘士がすごい存在であることはひしひしと感じられるようになっていた。ラカーユとしてもエルシドが尊敬をもって語られることは嬉しいが、同時に追いつくことは果てしなく大変であることも思い知った。
「エルシドさ…まは、いつ帰って来るのかなァ」
「わからん」
ツバキは上の空で答えていた。ラカーユの言葉遣いを直すのも忘れている。今エルシドは任務で聖域を留守にしていた。候補生ごときには黄金聖闘士の任務は知らされない。エルシドに関しては情報通のツバキも知らないのか、知っていても不安なのか、むっつりとしている。黄金聖闘士の任務は決して楽なものではないだろうが、ラカーユはエルシドの身に何か起こるとあまり心配はしていなかった。ただ、せめてエルシド様が聖域にいればもっと張り合いがあるのに、とは思った。何かの折に姿を見られることもあるだろうから。黄金聖闘士に、聖闘士候補生の修行に付き合ってもらえるわけはないけれど。
エルシドは弟子をとらない。黄金聖闘士として多忙なこともあるが、聖域にいるときもほとんど自分の修行に時間を使っているらしく、弟子をとる気はないようだった。聖闘士に、それも黄金聖闘士になっていても、なお自らの修行に打ち込む姿勢には頭が下がる。エルシドに憧れる者は皆、そのエルシドの姿に背筋が伸びる。だから、自分も早く聖闘士になって…!。
「よし、ツバキ、組み手しようや!」
「お、やる気か。容赦はせんぞ」
ツバキも同じような思考経路を辿っていたようで、先ほどの憂い顔から一転、こちらを向いてにやりと笑った。二人は座っていたところから勢いよく立ち上がると、修練場の真ん中に出ていった。
間もなく、聖衣獲得のための試合が行われる。俺は聖闘士になるんだ。エルシド様のお役に立つために。エルシド様ととともに戦うために。ラカーユは決意を新たにして拳を握り締めるのだった。
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そして一足先にツバキが聖闘士になってエルシドの部下になりに押しかけていって、悔しがったラカーユも次の機会辺りにそれに続くのですよ、というのがこのバージョンでの妄想です。
ラカーユ話のつもりだったけど、ツバキが結構出張ってきたぞ。ツバキの「過去」はこの設定だと「命」に書いた話と矛盾しますが、あのときのツバキを聖闘士から聖闘士候補生に読み替えれば、話したがらないのも道理ということで。
部下話はツバキ関係で3話、ラカーユ関係で3話、ラスク関係で2話書いてますが(みんなでいるものを除いて)、アニメで補完される前だったのでかなりオリジナル設定入ってました。
特にラカーユはうちのヒロインと一番絡むキャラにしてしまったので、「オリキャラ無し」に分類されるものが一つもありませんでした。
ラカーユは外伝にも登場したので、一度は原作寄りの形で書いておくべきかと思い、トライしてみました。
外伝の話の中で、ラカーユが聖闘士になれる片鱗みたいなものがもう少し出ていると嬉しかったのですが。
ツバキやラカーユは、候補生の弟子から聖闘士の部下になったのではない、という説を採っています。外伝ラストで候補生のツバキが出迎えに出ていたみたいなのでちょっと危ないですが(またこの先の単行本に何か出たら修正します)。
世間(星矢界)では「Ω」黄金聖闘士登場で盛り上がっていることと思いますが、ひっそりと。
(いや「Ω」も楽しく観てますよ! 「本館」に月末感想あげてます。今週はイオニアさんが地味に仕事していることが判明。まあ「良いこと」かどうかは…。落ち着いてみると、イオニアさんもそんなに悪くなかったという気もしてきましたが。)
LC外伝はレグルス編に入りました。今度はケルト的舞台のようです。アイルランドか?
童虎編の単行本発売は12月だそうです。外伝その後シリーズもぼちぼち準備しないとな。
エルシド巻の広告も今月で最後だろうな。エルシド様、5か月連続お疲れ様でした!
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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