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―KEN NO CHIKAI― since 2010.10.23
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Posted by MCBT - 2012.07.23,Mon
※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

外伝5巻を受けての話。
うちの部下四人(オリキャラあり)で始まって、エルシド、なぜかマニゴルド、ちょっといろいろ気になってしまうティソナ。

「お茶会」よりはあと、主編「慟哭」の章や「傷」よりは前。
「傷」を峰さんに言及して書き直すべきかとも思いましたが、とりあえずあれはあのままに。



拍手[1回]


---


 教皇の間に報告に行ったエルシドが戻ってくるのを待つ間、いつものように部下たちがお茶の用意をしているとき。
「う、うわっ」
 ラスクが蹴つまずいて派手に引っくり返った。
「何やってるんだよ」
「ちょっと、大丈夫?」
「う、うん、大丈夫」
 ラカーユとティソナに、ラスクはしりもちをついたままで答えた。
「あれ…?」
 こういうときにいつもベンチ代わりに使っている、櫃が一つ引っくり返って中身が床に転がり出ていた。大して多くのものは入っていない。否、たった二つだけだった。布でくるんだ細長い包みと、鞘に入った一本の剣。
「剣だよ…なんでエルシド様が剣なんて…? あれ、こっちも剣かな」
 ラスクはほどけかかっているもう一つの包みの布をめくってみた。
「こら、エルシド様のものを勝手にいじっちゃ駄目だろ」
 ツバキがじろりとラスクを睨む。「ちゃんと元通りにしておけ」
「あ、うん」
 ラスクが横倒しになった櫃を起こして中身を元に戻そうとしたとき、横からすっとラカーユが剣を取り上げた。
「…こんなところにしまってあったんだな」
 懐かしそうにつぶやいた。
「なに?」
「いや、これは俺の親父の打った剣なんだよ。俺の親父は鍛冶屋でさ。俺がエルシド様に初めて会ったとき、親父がエルシド様に差し上げたんだ」
「へーえ、こっちのも?」
 ラスクがほどけかけた包みからのぞくものを指さした。そちらはどうやら東洋の刀のようだった。
「あ…そっちは」
 ラカーユはちょっと言いよどむ。
「なになに?」
 ラスクは興味津津で聞いてくる。
「それは…エルシド様の候補生時代の知り合いの人が研いだ刀で、その人の形見だよ」
「へえ、お師匠様みたいな人だったのかな」
「いや、同じくらいの年の、ある意味修行仲間みたいな人だったって。俺が会ったときのエルシド様の任務ってその人がらみでさ。もう亡くなってて魂だったけど姿も見たよ。きれいな人だったよな」
「女の人だったの!?」
 ラスクが驚いた声を出す。
「ああ、うん」
 ツバキはちらりとティソナの方を見た。仮面のせいで表情は窺い知れない。
「ほら、エルシド様が戻ってきてしまうぞ。さっさと元通りにしろ」
 ツバキの声に、ラカーユとラスクは慌てて動き出す。ティソナもぴくりとした後、湯を入れにすっと立って奥へ入っていった。
「ふーん、でもエルシド様、候補生時代に女の人の知り合いがいたんだー」
 ラスクの声は無邪気に磨羯宮の中に響いていた。

 エルシドが帰って来た音がした。ひとしきり挨拶が交わされたりした後。
「エルシド様、峰さんってどんな方だったんですか」
 ラスクの声が聞こえる。
「何だ? 急に」
「おい、失礼だろう」
 不審そうなエルシドの声と、たしなめるツバキの声。
「すみません、そこの櫃の中身が出てしまって」
 ラカーユが申し訳なさそうに言っている。
「いや、別に構わん。ああ、そこにはお前の父親の剣も入っていたな。…峰は修行地での候補生時代の友のような者だ。形は違うが、ともに聖剣を目指す者としてのな」
 懐かしそうなエルシドの物言い。
「へえ、修行仲間みたいなお友達だったんですね」
 ラスクの感心したような言葉。それ以上は聞いていられなかった。ティソナは茶を入れたポットを持って奥の間から出た。
「すみません、急用があるのを思い出したので、私は今日はこれで」
 エルシドの顔を見ずに一礼すると、足早に磨羯宮を後にした。

 そのまま数日が過ぎた。

「やあれやれ、こんな時間から任務とはねー。ジジィも人使いが荒れえよなー」
 日が暮れかかる頃、マニゴルドはぶつぶつ言いながら教皇の間から降りてきた。
「通るぜ。何だ、景気の悪い面して」
「これは地顔だ」
 一人で飲んでいたらしい磨羯宮の主は仏頂面で答える。
「そうかあ? 彼女と喧嘩でもしたのかよ。なんだ、昔の女の話でもうっかりしたのか?」
 動きが止まった。雄弁な沈黙。おっと。冗談のつもりだったが思い当たる節があるのかよ。まさかこいつにねえ。
「ま、女心は複雑だからな」
 軽口風に言い捨て、磨羯宮を出た。
「さあて、と」
 修練場まで降りてきたマニゴルドは足を止めて見回した。だいぶ人がまばらになった修練場に、探していた人物の小宇宙を見つける。
「よう、お嬢ちゃん」
「…何ですか、マニゴルド様」
「上であいつがくさってるぜ。行ってやらねえのか?」
「……」
 まるで表情を読まれたくないかのように、顔を背ける。仮面をしていても実にわかりやすい。つと近づいて耳元で囁く。
「あいつが二股かけてんのなら、一発ぶっ飛ばしてやれよ」
「そんなこと…!」
「あるわけない、だろ?」
 思わず反論するティソナにマニゴルドはにやりと笑い返す。
「今、一番あいつの近くにいるのはあんただろ」
 思いがけず優しい声音だった。振り返ったティソナの肩をぽんと叩くと、マニゴルドは修練場を出て行った。

 あれからエルシドを避けていた。もやもやした気分が胸から去らない。こんな自分が嫌だった。
 あれこれ考えてしまうこと自体失礼なことだ。私にそんな資格なんてないのに。エルシド様の大切な方のことをどうこう思うなんて。友のような者と言っていた。おそらくエルシドのその言葉に嘘はないのだろう。
 わかっている。勝手につまらない嫉妬をしているだけだと。こんな気分になるのはばかげていると。たとえどうであれ、もう亡くなった方のことなのに。私はエルシド様の「今」をいただいている。それは間違いなく確かなもの。でも。
 ティソナは十二宮を振り仰いだ。
 こんな愚かな自分の顔を見られたくない。だけど。
 ためらいながらも、十二宮を上る石段に足をかけた。


---


さて、それで? エルシドは峰さんのことをうまく説明できるか!?
エルシドは微妙な女心はきっとわからないよねー。峰さんのも、ティソナのも。
ちょっとしたもやもや。エルシドの「今」の真心は信じているけど、過去の存在には太刀打ちできないから。
そんなこともあったかも、な日々。でもきっと大丈夫。

ラスクの天然。ラカーユもまだ無自覚。
うちのマニゴルドさんは相変わらずいい奴。

峰さんの魂があの刀に宿っていたとすると(「見果てぬ夢」あとがき)、えーと、うちの彼女のことも見てた? 認めてくれる?(笑)

 

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プロフィール
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MCBT
性別:
非公開
自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

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