謝辞ページへの拍手とコメント、ありがとうございました!
いつもお世話になっております。
すっかり遅くなりましたが、最近の拍手お礼話として、いろいろつめこんでみました。
カルディア外伝後、聖戦前のいつか。
カルディア中心、サーシャ、シジフォス、セージ様、最初にちょっとだけマニゴルド、最後にちょっとだけデジェル。
オリキャラは出ません。
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「お、誰か来るみてェだな。じゃ、お師匠、またな」
任務の報告がてら、教皇の間で話し込んでいたマニゴルドは立ち上がった。
「今日はゆっくり休むがよい」
「あんたもたまにはちゃんと休めよ。もうジジィなんだからよ」
「お前に言われるほど耄碌してはおらんわ」
セージは脱いでいた教皇マスクをかぶった。
「それかぶってると本当に腹黒ジジィにしか見えねェよなあ」
マニゴルドは笑いながら教皇の間を辞した。さて、あのマスクの下で影になった顔ですごまれるのは…。
カルディアが階段を上ってきた。
「お待ちかねだぜ」
「やれやれ、また説教かな」
カルディアも軽口をたたきながら上っていった。
「なにやら帰りが遅かったようだが。それほど手のかかるものではなかったはずだが?」
カルディアは悪びれることなく教皇を見返した。
「はいはい、問題なく終わりました。帰り道にちょっとサー…アテナ様へのお土産を選んでいましてですね」
「ふむ。何か良いものはあったのか?」
「まあ、なんとか。ところでそのアテナ様は?」
教皇の間の玉座は空だった。
「今日は先日冥闘士にやられた村に慰問に行かれている。そろそろお戻りになられるころだと思うが」
「そうですか、じゃ、俺はこれで」
出て行こうとするカルディアの耳に、つぶやく教皇の声が聞こえた。
「アテナ様は少々お疲れであろうな…お慰めになることがあると良いのだが…」
カルディアはにやりと笑い、出て行った。
「アテナ様、聖域に着きました。お疲れになられたでしょう」
「私は大丈夫です」
サーシャは傍らのシジフォスの気遣わしげな顔に笑顔を向けた。今日は一日中人々の間を歩いた。体が疲れていないとは言わないけれど、それよりも心が痛む。冥闘士に親を殺された子どもたち、子どもを殺された親たち。ただ抱きしめてあげることしかできなくて。
「よう、やっとお帰りか」
声に顔を上げると、私服姿のカルディアが十二宮を上る階段の手前の柱に寄りかかって立っていた。いつものように林檎をかじりながら。
「カルディア。アテナ様の前で行儀が悪いぞ」
シジフォスが苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「カタいこと言うなって。ちょっとアテナ様借りるぜ」
「おい…!」
サーシャの腕を引いて連れて行こうとするカルディアを止めようとしたシジフォスをかわしながら、カルディアはその耳元にささやいた。
「…上は了承済みだ」
動きを止めたシジフォスを振り返らずに、カルディアはサーシャを連れてどんどん歩いていった。
「あの、カルディア…どこに行くの?」
「このあいだ、いいところ見つけたのさ。サーシャも気に入ると思うぜ。…ほら、ここだ」
「わあ…」
そこは花の咲き乱れるこぢんまりとした草原だった。花といっても小さな名もない野原に咲くものだ。三方がちょっとした崖に囲まれていて秘密の小部屋のようになっている場所で、一方だけ開けていて彼方の海まで遙かに見渡せる。
「サーシャ、お土産があるんだ。一緒に食べようぜ」
カルディアは手にしていた荷物をどさりと置いた。
「え、なに?」
サーシャは目を輝かせてカルディアを見た。
「大したものはないけどな。何が好きかよくわからなかったし」
「あ、でも、おいしそうです!」
サーシャは嬉しそうにカルディアが持ってきた菓子に手を伸ばした。
「飲み物はデジェルにちょっと冷やしといてもらったぜ…って冷えすぎだろ」
ぼやいたカルディアの手には中身がまだ凍ったままの水筒があった。
「こっちのは大丈夫か。ほら、飲めよ」
カルディアはもう一つの水筒をサーシャに渡した。
「こっちはしばらくこうしとくか…」
ごろりと寝転ぶと、カルディアは自分の胸の上に凍った水筒を乗せた。
「ああ、気持ちいいや」
「カルディア…」
そっと手をふれると、カルディアの体はわずかに熱かった。
「大丈夫だって。しばらく寝てたらおさまる。それよりお前も転がってみろよ。気持ちいいぜ」
「うん」
並んで横になると夕陽に染まりかけた空が見えた。まだ明るい空にすでに見えているのは宵の明星か。平和をもたらすもの。
「なあサーシャ」
「なに?」
「あんまり一人で抱え込むなよ。お前はお前がいるってだけでいいんだからな」
「!…ありがとう」
私がちょっと落ち込んでたのに気づいて慰めてくれてるんだね…。自分をアテナと知っても態度が変わらなかったカルディアが嬉しかった。サーシャはカルディアの手をそっと握り締めた。
「…それで、二人並んで眠りこけていたところを見つかって、シジフォスから大目玉を頂戴したというわけか。まったく、お前というやつは」
デジェルはため息をついて、肩をすくめて笑っている友人を見やった。
だが、アテナ様のとりなしによってその説教は大したことなく済んだらしい。この男の存在がアテナ様のお心の慰めになっているのなら、それも良いだろう。デジェルはカルディアの林檎を自分もかじりながらそっと微笑んだ。
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セージ様、マスクかぶってると悪役にしか見えないときがあるよなあ。教皇マスクってどうしてそんな悪人面に見えるの?って黒サガがいけない気がしますけどね。
教皇様のつぶやきはわざとです(^^)
カルディアくんはいいかげんなように見えて、実は察しが良くて気の回るやつだと思います。
宵の明星こと金星が「平和をもたらすもの」というのは、ホルスト作曲の組曲「惑星」からです。
ちょっといろいろ調べてたら、金星は、アステカ神話でケツアルクアトルがテスカトリポカに敗れたときになった姿だそうで。偶然の一致ですが、ケツアルクアトルは平和の神としても信仰されていたようですね。
遠足でよくジュースとか麦茶を凍らせて持って来る人っていませんでしたか? そして飲む段になってもまだ氷の柱みたいになってて融けきっていないっていう…。
18世紀の水筒ってどんなものがあるんだろう? 革袋? だとすると凍らせると袋が傷みそうだけど、小宇宙だからきっと大丈夫!(万能な呪文だ) 15世紀くらいには隊商用ガラス製の水筒なんてものもあるんだけど、それも凍らせると容器が壊れそう。でも小宇宙だから…!
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
何かありましたら
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