原作アニメに出てくるパキアくん絡みの話。前半エルシド、後半パキア、最後にフェルサー。
「もう一人の部下」になるかもしれなかったパキアくんは、うちの「もう一人の部下」とかぶる気がして、必ずしもうちのサイトの設定と矛盾しているわけではありませんが、基本「いない者」としてふれていませんでした。
ですが、エルシド関係だし、ちょっと引っかかるところもあったので、書いてみようかと。
オリキャラは出ません。
ちょっとだけ、外伝その後シリーズ第5弾「二振りの刀剣」につながっています。別ものとしても可ですが。
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『私は貴方のように強くありません』
俺が強いと? 死を覚悟せねばならない状況に自分を追い詰められても平然としていられる鉄面皮な人間だと? 初めからそんな者などいない。俺が何もしないで、才能だけで強くなれたとでも? そのための修行だったはずだ。
迫りくる波を斬り裂き、岩壁を断ち割る。エルシドは荒い息を吐く。いまだ満足を感じることができず、任務の報告の後にも修行に打ち込む毎日。
まだだ。まだ足りん。俺にはまだこの拳を「聖剣」と呼ぶことはできん。
パキア、お前の心は聖闘士になるには柔らか過ぎたのだろう。俺にはそれを見抜く力がなかった。非があったのは俺かもしれぬ。俺のやり方では、お前を正しく導いてやることができなかった。俺にはシジフォスのようにお前の心を理解できる柔軟さがなかった。断罪すべき脱走者としてしか対することができず、アテナ様への忠誠心を持つ者として別の道を生きる選択肢を認めることができなかった。
これからはそれぞれの道を進むことになるだろう。お前は選んだ道を進め。次代につなげていく道を。俺には進めない、その道を。
*
「エルシド様?…ツバキ? ラカーユ? ラスク?」
彼らの小宇宙が…命がはじけたのを確かに感じたと思った。後日、夢の神と戦い、彼らが逝ったと聞いた。夢の神はエルシドと相討ちで斃れたと。
エルシド様…。貴方はやはり強かった。けれど私がそれを口にすべきではなかったのかもしれません。貴方が人一倍修行に打ち込み、常に鍛錬を怠らなかったのを私たちは知っていたはずなのだから。貴方と私は違う。貴方は貴方の道を全うされた。私も、自分の道をしっかり全うしようと思います。
「遅くなってすみません」
エルシドの墓標の前に立ったパキアは頭を下げた。かつての仲間たちのそれと違い、この下にエルシドの遺体は埋まっていないというが。
「珍しいものが入ったので、ちゃんと自分で買って持って来ました。貴方はご自分に花など似合わんと仰るかもしれませんが…私のせめてもの気持ちを受けてください」
パキアは携えてきた花枝を墓前に活けた。
「では、失礼します。私を…貴方の守った世界を、見守っていてください」
「誰かが来たのか?」
フェルサーは訪ねあてたエルシドの墓標の前で首をひねった。あいつは案外聖域で人望があったのかもしれんな…。他人への面倒見がいい奴とは思わなかったが、俺の認識不足だったか。俺は人を見る目のない馬鹿者でもあったようだ。フェルサーは苦笑した。
「エルシド、お前は夢を…聖剣を完成させたのだろう?」
墓標は何も答えない。フェルサーはエルシドが夢の神とともに滅したという空を見上げた。
墓前に活けられた桜の花びらがいくひらか、風に吹かれて空の彼方に舞っていった。
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「花屋の道」というタイトルにしようかと思いましたが、すでに似たようなタイトルにしている学パラの話と紛らわしいので…。
パキアくんはお花屋さんになったみたいなので、「花」ネタで外伝とちょっと絡めてみました。
パキアくんの台詞「私は貴方のように強くありません」が観た当初から結構引っかかっていました。
エルシドはあれを聞いてどう思ったのだろうかと。エルシドだって最初から悟っていたわけではなかっただろうし、聖闘士になった後だって常に修行しているんだよ!
フェルサーさん、認識不足じゃないかもです。
エルシドは人望はあるかもしれないけど、部下への接し方はあんまりうまくないと思います…。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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