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Posted by MCBT - 2013.03.08,Fri
※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

エルシド外伝からのフェルサー話はいくつか書いてみましたが、後日談として、フェルサーを割といい人にして書いていました。
でも彼は、多少たきつけられたのだとしても、決して夢神にただ操られていたわけではなく、自ら「カタラニアの覇王」をやっていたのですよね。
前日談としてそのへんの「黒フェルサー」の心情を。苦手かも、という方はスルーでお願いします。

オリキャラは出ません。

外伝エルシド編の雑誌掲載→単行本の変更点詳細を「本館」の感想に追加しました。興味のある方は後書きよりどうぞ(2013.3.10追記)。
 


拍手[1回]


---


 俺は本当は、あいつを憎んでいたのかもしれない。

 同年輩で、ともに『聖剣』を目指していた峰とエルシド。はっきりとした夢、進むべき道が見えていたお前たちは俺には眩しかった。二人がともに競い合いながら、それでも別の道を、それぞれ進んでいくのなら、それも良いかと思っていた。
 だが峰が死んだ。峰だけが。峰は死んだのにあいつは生きている。そして一人、道を進み、聖闘士になったのだ。その不公平感が、俺の中の何かに火をつけた。峰の夢を叶えてやろうと俺は思った。そのためなら、どうせ夢も望みもなくただ生きているだけのくだらない奴どもの命などいくらでも屠ってやろうと。俺と同じく、無為に生きているだけの者たちなど、峰が夢を叶えるための糧となるぐらいしか価値はあるまい。俺は夢神の誘いに乗った。聖闘士としては役に立たなくなった身でも、『神』の力があればたいていのことは可能になる。俺には夢はなかった。だが人間どもの熱気を吸い上げ、峰の聖剣が形作られるのを見ることが、俺の喜びとなった。峰がそのようにしてでも、聖剣への夢を叶えたいと思っているかどうか考えもせずに。
 あいつがやって来るのを、俺は待っていたのかもしれない。こうして夢神の力を揮い続ければ、いずれは聖域に知れるところとなるだろうことはわかっていた。あいつは今でも自らの道を邁進し続けている。黄金聖闘士となっても、『聖剣』を極めるために、さらに鍛錬を続けているのだろう。峰はもういないのに、一人だけで。峰を置き去りにして。あれほど仲が良かったというのに。二人とも俺には『先輩』として一歩距離を置いていたが、互いは好敵手のように認め合っていた。その二人の関係が、俺には羨ましかった。いや嫉ましかったのかもしれない。俺が修行地を出たのは、二人を見ていることが、自分には辛くなったからかもしれない。
 峰の瞳がしばしばお前を追っていたのをお前は気づいていたか? 峰の心には? 峰を失って、なぜお前は平静でいられる? お前にとって、峰は、その程度の存在だったのか? 良かろう、お前がそうして己の道しか見ていないのなら、この俺が峰と夢神の力をもってお前をくじいてやろう。俺の持てなかったもの、俺が手に入れられなかったものを持っているお前を倒す。そのことでこの心の隙間を埋めよう。お前には、夢を持てない者の、この何もない虚しさはわかるまい。俺とて自らの道を見つけたいと思っていたのだ。当たり障りのない、上辺だけの優しさはもはや不要。興奮する見世物を、観衆は安易に求める。なんともくだらないことだ。始めてしまえば容易だった。殺戮の熱気の快楽に、俺は酔った。何もない虚しさを埋めてくれるかのような、この快楽に。
 朝日が昇って来る。朱く燃えながら。真実の色、血の色のごとくに。早く来い、エルシド。お前は俺にとって最上の糧となるだろう。お前のあの無表情な顔を、苦痛と無念さに歪ませてやる。死の驚愕に目を見開いた血の滴るお前の首を掲げるのは、どれほどの高揚感を与えてくれるだろう。…それとも、それさえも、単なる一つの熱、一時凌ぎに過ぎないのかもしれない。

 俺はせめて、誰かを憎みたかったのかもしれない。


---


エルシドさんはあんなに懐いていて、再会したときあんなに辛そうだったのに、フェルサーはなんだかエルシドに冷たいよね…というところから。
フェルサーが峰に恋愛的感情を抱いていて、そういう意味でもエルシドに嫉妬していたというのだとわかりやすいですが、フェルサーと別れたころの二人がまだ結構子どもっぽかったので、フェルサー→峰だとちょっとロリコンくさい…。峰は女の子としてはあのくらいの年格好でエルシドに恋愛感情的なものを持っていてもいいのではと思いますが。でもフェルサーは体がでかいけど、もしかしたら実年齢はそんなに違わないのかもしれないので、恋愛のもつれ?が入っていてもいいかもしれません。

恋愛的なものがなかったとしても、優しく見える人でも実は鬱屈を抱えていて、何かのきっかけで闇に傾いてしまうとか、いろいろ歪んでしまっているところ、一種の狂気を書いてみようと。
エルシドは別に峰のことを忘れたわけでもどうでもいいと思っていたわけでもないとは思うけど、外には伝わりにくいよね。それにしても「鉄面皮」はないだろう、フェルサー…。
でもフェルサーも内心、いずれエルシドが来ることを期待して、無意識のうちにエルシドに自分を止めて欲しかったのかも。

ちなみに「カタラニアの覇王」という表現は単行本ではなくなっています。第41話「黒き潮流」の回の「赤い鮮血と…」になった部分で使われていました。
外伝エルシド編は、次の童虎編が週刊誌から月刊誌に変わって単行本化に余裕があったせいか、ずいぶん追加・修正入ってるんですよね。どこがどう変わったのか興味のある方は「本館」の感想「LC漫画外伝5巻」をご参照ください。変更点前後ほか大幅加筆しました(2013.3.10)。
 

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自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

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