外伝前と、その後?のシリーズ第8弾のおまけ。こっちの方が長いし、シリーズの趣旨に沿う気も。
アスミタ関連。そんなわけで、アヒンサー。
オリキャラは出ません。
明日は手代木先生のサイン会!
原画展を見がてらご尊顔を拝しに行こうかなあ。
原画展は各地で開かれ、しかも内容が違うとか。エルシド様はどこかにいますか?
「貴様、何をしている!?」
「やべっ」
少年は立ち上がってすばやく逃げ出した。
「ちえっ。あそこの仏像の金箔は剥がしやすかったのになー。しばらく近寄れないなあ。でもまあ、これだけあれば…」
鼻歌交じりに少年は市場を物色し、うまそうな食べ物を、ちょっと奮発して肉の入ったものも買った
「母ちゃん、ただいま」
「おかえり」
「すぐ飯作るから待っててくれよな」
「いつもすまないねえ」
だがせっかく作った食事にも、母はほんの少ししか口をつけなかった。
「…それしか食べないのか」
「ああ、今日はあまりお腹がすいていないからいいのよ。お前が食べなさい、育ち盛りなんだから」
母は微笑んで食事の載った皿を息子の方に押しやった。
「そうかあ?」
そう言われてつい食べてしまったが、このところ母の顔色が良くないのが心配だった。もっと滋養のあるものを買ってこないと。薬も必要だけど高いからなあ。アヒンサーはため息をついた。
今日も道端に倒れている人を見つけた。割と身なりはいい。何かいいものを持っていないかと近づくと、弱々しく顔を上げた。
(チッまだ生きてんのか…)
踵を返しかけたとき声をかけられた。
「水を…どうか…」
つい振り返ってしまった。
(面倒くせェ…。まあ、いいか、水場はすぐそこにあるし)
「ほらよ」
水筒をあてがってやると、むさぼるように飲んだが、かなりの量があごを伝って流れてしまった。
「ありがたい…お礼に…」
言いかけて、がくりと崩れ落ちた。
「おい…!」
抱え起こすと、すでに事切れていた。
「なんだよ…」
拍子抜けしてアヒンサーはぼやいた。少々気がとがめたが懐を探ってみると、金袋が手にさわった。
(いいよな…お礼くれるって言ってたし。どうせ死人には必要のねェもんだし)
引き出すと、ずしりと重い。
(すげェ…。あんがとよ)
アヒンサーは倒れている男をちょっと拝むとその場を離れた。すぐそばに寺があった。
「おい、そこで行き倒れてる奴がいるぜ。これで弔ってやれよ」
門前にいた坊主に金袋からつかみ出したいくらかの金を投げると、アヒンサーはうきうきと走り去った。
(これだけありゃあ、母ちゃんのために薬が買える。食い物もいっぱい買って…)
家で伏せる母が、このとき、もはや手の届かないところに行ってしまったことを、少年はまだ知らなかった。
*
「お前、何をしてきたんだい」
「何でもねェよ」
ばたばたと家に逃げ込むように帰ってきた少年は首をすくめた。腹が減ったので、仏像の供え物をちょっといただいてきただけだ。どうせあいつらに食べ物は必要ない。腐って無駄になるくらいなら、生きている者が貰ってもいいだろう。
「すぐご飯だよ。大した物はないけどねえ」
「わかってるよ」
母子二人の家は貧しかった。
「お前はたくさん食べなさい、育ち盛りなんだから」
「母ちゃんも食えよ。元気なだけが取り柄なんだからさ」
二人は乏しい食事を分け合いながら笑いあった。
そのうち絶対にもっと母ちゃんにいい暮らしをさせてやる。食事が終わってもまだ残る空腹感に、アヒンサーは密かな決意を固めるのだった。
ふと、アヒンサーは顔を上げた。
どこかから、澄んだ読経の声が聞こえたような気がした。
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アヒンサーの少年時代の絵、かわいかったです。
捏造過去を作ってみました。
当初はそれで終わろうかと思いましたが、それではちょっとあんまりかと、転生後の捏造未来?をつけてみました。
すべてとはいかないけど、せめてちょっとは状況が好転している未来を。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
何かありましたら
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