「天文台」への拍手(2回目)、「利き腕」への拍手とコメント(これも2回!)、ありがとうございました!
パラ銀前の原稿忙しい時期に、皆様ありがとうございました~。
前の話でエルシドを書いたら、なんだかふいにやる気が出てきたので(笑)、一人エルシド祭り始めました。どこまで続けられるかな。
うちでは一回出ただけのテンマくん。
原作本編を読み返してみたら、改めて二人のシーンがいいなあと思ったので。
でもあの本編の話以前では直接出会っていないと思われるので、原作のテンマくん補完をしてみました。
本当はあのくだりに私がいまさら何か付け加えることなんてないんですが!
新しい展開はないので(すごい蛇足感に満ちているかも)、別にいいやと思われる方はスルーで。
原作漫画をベースに、アニメ展開も混ぜてます。
オリキャラは出ません。
LC外伝牡牛座編、完結しました。きっと分厚い一冊になるんですね。
次は射手座シジフォス編だそうです!
もうすぐパラ銀ですね~。
楽しみですが、久しぶりのビッグサイト、ちゃんと行けるか?(←方向音痴)
何がなんだかわからないうちにモルペウスの野郎を倒したと思ったら、周囲が崩れてきた。
げっ……と思った瞬間、黄金の光が走り、落ちてきた瓦礫が斬り裂かれて周囲に崩れ落ちた。その向こうから現れた姿。
まばゆい黄金の聖衣。だけど、その山羊座の黄金聖闘士、エルシドはすでに万全じゃなかった。何でもないような顔で俺を『保護』するなんて言ったけど、血が染みて裂けたマントの下に見えたその腕は。
「右腕、平気なのか!?」
聞いてもそっけない返事が返ってきただけだった。大丈夫なはずがない。そりゃ平気じゃないって言われても困るけど、でも本人に問題ないって言われちまったら、それ以上は何もできないじゃないか。
エルシドがその魂を探しにきたというシジフォス。その人を助けることの方が自分の命より大事なことみたいだ。同じ黄金聖闘士だってのに、あんたとその人はそんなに違うものなのか?
エルシドの拳でも、シジフォスの夢の門は揺らぐだけでびくともしなかった。
「無駄だ。何人たりともその門を開くことは不可能。シジフォス自身の意思のもとに固く閉ざされているのだからな」
夢神がもう一人現れた。今度は誰だ?
「もはやお前にできることは何一つない」
「確かにそうかもしれぬ。もはやシジフォスを救えるのはただ一人」
その言葉とともにエルシドは斬撃を放つ。
「狙いも定めらぬほど消耗したのも確かなようだな」
虚空に消えたかのようなその一撃に、夢神オネイロスと名乗った神は冷笑する。エルシドの表情は変わらない。さっきの一撃は目の前のこいつに向けたんじゃなくて、何か別の目的があるのか?
「我々、神は常にお前たち人間の想像も及ばぬ次元にいるのだ」
オネイロスはわけのわからないことを言ったと思ったら、なんと俺たちが倒した自分の兄弟神の魂を呼び寄せて合体しやがった。エルシドは、そのうちの2神を倒してきたという。よく考えるとそれはそれで、ものすごい気がする。ただ者じゃないぜ。でも感心している暇はない。
寄せ集めだっていうのに、斬られても簡単に再生するとか、反則だ。神様だか何だか知らないが、甦ってくるだけでもたちが悪いっていうのに。
「ガーディアンズオラクル!!」
やばい!
光が炸裂した。
…生きてる? 目を上げると、俺たちの前に、俺たちを守るようにアテナの杖が立っていた。いや、実際守ってくれたみたいだ。アテナの…サーシャの姿がふわりと現れ、微笑んでシジフォスの門の中に消える。先ほど斬り裂こうとしてもびくともしなかったその門へ。サーシャが自らやってくるなんて、やっぱりシジフォスって人は聖域にとって大事な人物らしい。それならば。
「ならば我々の成すべきは一つだ、天馬星座! この門、必ず守りぬくぞ!!」
「おう!!!」
サーシャが、その人を連れて出てくるまで。
エルシドが拳を振るった。すさまじい威力だったが、オネイロスにはあたっていない。
「馬鹿め。どこへ放っている!?」
オネイロスは嘲笑ったが、エルシドの目線の先を見て、俺にはぴんと来た。
「よそ見してると危ねーぜ!」
俺たちは次々に拳を繰り出す。俺たちを馬鹿にしている神様は、まだこっちの意図に気づかない。もう遅いぜ…!
「まだ足りん、天馬星座!」
エルシドの蹴り技ジャンピングストーンと、俺の彗星拳が命中した。
夢界の壁が裂け、現実に戻った。見せられていた夢の中では無傷だった故郷の街が、見る影もなく滅ぼされている。そう、これが本当の現実なんだ。
「エルシド様、助太刀いたします……!!」
森の中から三人の聖闘士が走り出てきた。気が立っているオネイロスが合体して六本になった腕の一本を振り上げる。
「イカン!! 逃げろ!!!」
エルシドが血相を変えて叫んだ。
激しい衝撃。一瞬で砕け散る聖衣。今回はアテナの杖の守りはない。
「テメェ!!!」
俺の頭に血が上った。突っかけようとしたとき、オネイロスがその冥衣を降りしきる刃にして放った。やられる!と思ったとき、エルシドが俺の前に出てその冥衣を斬り払ってくれた。
「感情で動くな。死ぬぞ」
「じゃあ、あんたは平気なのかよ…」
思わず、言わずもがなのことを口走ってしまい、次の瞬間、俺は舌を噛み切りたいくらい後悔した。
「あれは俺の部下だ…」
押し殺した、だが血を吐くような言葉。そうだ、さっきはこのずっと平然としていた男が、必死に止めようとしていたっけ。オネイロスが挑発するような言葉を投げて寄越す。はやる俺を、エルシドが制する。その冷静さの下に滾る熱い思い。多くの生命でできている大義への道。それを。
「ただ貫け!!!」
斬っても斬っても再生してしまう。その薄笑いに、また頭に血が上りそうになる。
「すぐに心を乱すな、天馬星座」
エルシドの諫める口調に、焦燥感にかられながらそちらを見ると、腕の傷口からいまだに僅かずつ血が滴っているのが目に入った。それは確実にエルシドの生命を削っている。もうあまり余裕はないはずなのに。ここで俺が動揺してる場合じゃない…!
「天馬星座。次で決めるぞ。協力してくれるか」
「もちろん。何でもするぜ! 言ってくれよ!!」
先程からともに戦ってはいるけれど、口に出しての初めての依頼。黄金聖闘士からの。その信頼が胸にぐっとくる。
「全力で撃て!!!」
エルシドの合図とともに、流星拳を放つ。これを最後になんてさせない。連続して流星拳を弾幕のように撃つ。それに気をとられた一瞬の隙に。エルシドが夢神を斬り裂いた。
「上出来だ」
無表情だったエルシドの顔がわずかに緩む。
「やった…」
だが。
「今の貴様では力およばなかったな」
くそ…まだなのかよ…!
かつて、アスミタは冥闘士を封じる呪具を作るため、小宇宙を燃やし尽くして俺の目の前で消えた。アルデバランは俺を襲いに来た奴を撃退して、俺が意識を失っている間に斃れた。軽口をたたきながら冥界へ飛んだマニゴルドも、とうとう戻ってこなかった。
エルシドは動かなくなっていた。虫けらのように聖闘士の生命を屠ったこのとんでもねぇ神様を相手にして、これだけのダメージを与えられる男。何度も助けられた。力を合わせて戦った。あと一歩のところなのに。俺の目の前で、もう誰も死なせやしねぇー!!
一人でも突っ込もうとしてまたぶっ飛ばされそうになったとき、耶人とユズリハが現れた。ハーデス城へ向かう途中、おそらくはこの夢神どもの奸計ではぐれてしまった仲間たち。三人の力を合わせても、体が分断されたままでも、こいつは強い。それでもその魂の一つぐらいはもらってやる…!!
突然、エルシドが立ち上がった。何かを待ち受けるように、こちらに背を向けて立っていた。聖域の方角から何かがやってくるのを感じる。これは…サーシャの小宇宙か?
欠けても折れても、体現する一振りの剣。剣のようなエルシドの技。それはまるで『聖剣』。アテナの小宇宙を載せて飛来してきた一本の矢を、エルシドは分断して夢神の魂をすべて射抜いた。一瞬の出来事だった。
だけどオネイロスの奴はしつこかった。道連れにしようと俺に向かって飛びかかってきたのだ。
そのとき、地を蹴ってエルシドが夢神を押し返した。神に刃向かう程貫くものがあると。
(天馬星座テンマ!!)
初めて、俺の名を呼んだのがわかった。
そしてエルシドは散った。その身をもって、夢神に俺を取らせまいとして。俺のために。
「ちくしょおおーッ!!!」
俺の目の前で、もう誰も死んで欲しくなかったのに。
エルシドが切り開いた道。その生命で築かれた道を、俺は進む。
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テンマくんはいい子だなあ…。あんな無愛想なのに(アニメだと輪をかけて)、心配してくれるし。
エルシドさんをテンマくんに感心してもらおうと。
アンソロでテンエル描かれていた方がやっておられたように、もし聖域で再会できたら、きっと手合わせして欲しいって言うんじゃないかな…。
テンマくんっぽい明るい調子で書き始めたのですが、はからずも「死」の場面を書くことになってしまいました。テンマくんとのことを最後まで書くとなると当然だったのですが~。
エルシドは、主人公テンマくんと唯一共闘した黄金なんですよねえ。
テンマくんは実は黄金さんたちとかなり面識ありますよね。作中で全く接点がなかったのはアルバフィカとカルディアくらい。それも、テンマくんは修行地が聖域なので、名前くらいは、もしかすると顔も、知っている可能性はありますよね。
エルシドとは原作では直接は会ったことはなさそうで、アニメでも「山羊座の剣は聖闘士最強の刃」って「童虎から聞いたことがある」って言っていました。うちのサイトだと、テンマくんは「墓地」(オリキャラ設定入ってます)でチラッと姿を見ていて、エルシドのことも知っていることになっていますが、今回はとりあえずそのへんは無視で。原作設定を優先します。顔を合わせて話したりしたわけじゃないので、完全に矛盾するわけではないですが。
夢界でのテンマとの以心伝心の共闘、結構好きでした。テンマくん察しがいいよ! アニメでちょっと改変されていたのが残念。
それにアニメだと「保護」するって言ってくれないんですよね。愛想も悪いし(笑)。シジフォスとの絆を強調するための措置だとはわかるんですけど(事実上「保護」はしてるし)。でもやっぱり言って欲しかったな~。
部下を失った後の「たとえ折れても~俺の誇り」のあたりとかも~~!
でもアニメも好きなところ多いので、そっちの台詞や設定もちょこちょこ使ってます。節操なし!
アニメ後半のエルシド関連台詞拾いをしてくれたろん様、感謝です!
アニメ展開では、自分にシジフォスの夢の門が開けないと見るや、断固自分でやろうとしていた方針をすぐさま切り替えてアテナ様に小宇宙で連絡するところとか、良かったです。
エルシドと、エルシドに縁があった人たちとのことを書こう!という一人エルシド祭り。
シジフォス→テンマ→次は誰?(エルシド様、付き合い狭いんだから~)
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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