アスミタ編にならって、外伝その後シリーズ第11弾その2、その後というよりその直前。
言うまでもありませんが、完全捏造です。
コカロとエマ、というよりほぼアスプロスの話。デフテロス関連。
オリキャラは出ません。
そこを選んだのにはわけがあった。
一つはこの闘技場はデフテロスがよく修行の場に使っていること。聖域の外れにあるここには人がめったに来ないからだったが、それには理由があった。それこそアスプロスがここを選んだもう一つのわけだった。そこは亡霊が出るとして避けられている場所だった。「亡霊の闘技場」、アテナが封じた戦神アレスの戦士、狂戦士(バーサーカー)の亡霊が出ると。
「ふん」
アスプロスは目立たぬように貼ってあるアテナの符をそっとはがした。破りはしない。完全に破棄するのはまだ先の話だ。それでも闘技場の中の様子が変わる。地面が凹み、首のない戦士の姿が立ち上がるのが見える。だがいずれも霧のように透き通っており、実体がない。まさに「亡霊」だ。このままでは闘技場から出られないだけでなく、ほとんど何もできない。アテナの封印の効力はまだ完全に失せてはいないからだ。
(兄さん…兄さん…!)
それでも微かな声が耳に届く。一人だけ首のある姿が闘技場の中を彷徨いながら誰かを捜している。
「憐れな者よな…」
アスプロスが見ていると、それはひときわ大きな、まだ地面に横たわったままの体を見つけ、抱え起こそうとしていた。
ふっとその光景が揺らぐ。やはり半透明ながら、別の状景に切り替わった。時間を少しさかのぼったようだ。なぜならそこに見える姿のほとんどにはまだ首があったからだ。人数的には劣勢でも、狂戦士は勇猛だった。追い込まれたこの闘技場の中で、尚暴れていた。だがそれでも、一人また一人と首を斬り飛ばされて倒れていく。
アスプロスはまだ立っている一人の大男に目をつけた。
(お前だ)
何かの気配を感じたのか、その男がこちらを振り向く。
「お前にはこの技の実験台になってもらうぞ。そしてあの弟(デフテロス)を試すためにもな」
叫んでこちらに攻撃を仕掛けようとした男の額に向けて、アスプロスは技を放つ。立ちすくむ男の姿。後ろから迫っていた兵士たちが男の足に斬りつける。そしてがくりと膝を折った男へ兵士たちが攻撃をしかけ、ついにその首が飛ばされる。
(兄さん!)
先程も見た、小柄な姿が倒れた大男の体に駆け寄る。取りすがるその背に幾筋もの斬撃が浴びせられ、間もなくその姿も崩折れる。
アスプロスが手にしたアテナの符を振ると、ふっとすべての状景がかき消えた。まったく何もなかったかのように闘技場は静まりかえる。
「あとは仕上げだ」
アスプロスは闘技場を出ると、その闘技場全体を次元の網で覆った。これでここには入ることができなくなった。だがわざと、ところどころに隙間を作っておいた。力ある者なら、無意識にその隙間を見つけて入ってしまうだろう。誰かが入ればアスプロスにはわかる。
「さて、どうなるか見物だな…」
アスプロスはにやりと笑い、置いておいた聖衣箱を肩に担ぐと、任務に赴くために去っていった。
これが教皇選前の最後の任務になるだろう。せいぜい完璧にこなしてみせよう。
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外伝デフテロス編のオリジナルキャラと言えばコカロとエマですが、この二人には、束の間の幸せなひとときなんて時間はほとんどなかっただろうなあ。
しかしこの二人はアスミタ編のアヒンサー以上に死んでるし(笑)、ということでアスプロスにも出演要請。したらアスプロスの独演場になっちゃいました。どうしてこんなことに(笑)。
闘技場の闘士からアレスの戦士となったコカロとエマは、戦神アレスとの戦いというものが無印ほか原作にはないので、もうちょっと書きたい気もしましたがあまりに情報が少なく。
「首を落とされても尚暴れる」というからには、弱い者は即殺されるという過酷な闘技場で生き残ってアレスの戦士に選ばれた狂戦士は、神の血的な何らかの加護を受けたのだろうなあと推察されますが。「アレスの炎」っていうものも使ってるし。
闘技場で処刑されたというユンカースの話をちょっと変えてみました。コカロが死んだのは「処刑」という感じじゃなかったし。
エマくんの首がつながっていたのは、死因が斬首じゃなかったんじゃないかという、ろん様の意見を採用しています。
そういえばクレスト先生のところで、アレスの戦士として暗黒聖闘士も出ていたっけ。暗黒聖闘士は原作無印では後々を考えるとよくわからない存在だったけど、LCではマニゴルド編で出て、エピGでもティターンの民のなれの果て?という設定が出たりして、いろいろ使われてますね。
「星矢」はそういう隙間を考えるのも楽しいですね。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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