外伝その後シリーズ第13弾。シオン関連。
その後というか、「その前」のアヴニールのいた未来を考えてみました。
ただただ暗いです。いつにもまして捏造満載。
最後にちょっとだけシオン自身とマニゴルドと、しゃべらないけどアルバフィカ。
オリキャラは出ません。
11か月ぶりのSS投下です。
外伝キャラでもう一回りくらい書きたい気がしているので、たまに思い出したらのぞきに来て下さいませ。
地上波、東京MXテレビでLCアニメ放映しています。毎水曜日、なんとゴールデンタイムの19:30から。
観られる方は是非。ブルーレイで全部持ってるけど、つい観ちゃうよね。
これが好評なら第三期・第四期の制作を…!
此度の聖域の復興は困難を極めた。前聖戦後、黄金を含めたほぼすべての聖闘士や聖域関係者が失われてしまったからだ。冥界側の「神」が関与したらしいと囁かれていたが、何があったかは定かではない。教皇や教皇代理もおらず、聖戦後かなり経ってから、各地の修行地にいた者たちや独自に小宇宙に目覚めた者たちが伝承を頼りに集まり、その中でさらに優れた小宇宙を持つ者が聖闘士になり、黄金の位に値する者が出てそのうちの一人が教皇になって秘されていた資料を読み解けるようになるまで、聖域は混乱のうちにあった。ようやく態勢が整ってきた頃には聖戦はもう間近だった。智慧も力も、まだ多くの闘士たちが未熟な状態にあったというのに。
熟達度の低さを補うために、新教皇はスターヒルで得た知識を積極的に聖域の者たちに開示していった。だがそれはまた、冥界側の間諜に知られるところともなった。多くの情報が敵方に流れ、結果的に、それが命取りとなったのだ。
破滅は、はじめは天変地異の形で襲ってきた。旱魃と山火事、大雨と洪水、噴火と地震。聖域が各地の災害への復興に手を貸そうとしているさなか、聖戦がその本来の姿を現し始めた。大地を割る得体のしれない大爆発、炎の海にのまれ崩れていく建物群、突然血を吐いて倒れる人々。冥闘士が跋扈し、逃げまどう人々を狩ってゆく。災厄の起こる背景には、常に巨大な二つの黒い影が浮かんでいた。
世界各地の修行地や拠点から、次々と凶報と応援要請が届いてきたが、すでに侵攻してきた冥王軍を退けようとするのでめいっぱいな聖域にも割ける人手はないに等しく、各地の聖闘士たちは自分たちで何とかするしかなかった。次第に報告も途切れがちになり、やがてやって来なくなった。すでに報告する余裕すらないのか、それとも一人残らずやられてしまったのか。世界は危機に瀕していた。
私は第一宮である白羊宮を守る聖闘士だ。だから黄金で真っ先に死ぬのは自分だと思っていた。それなのに。アヴニールは十二宮を振り返った。それなのに、アテナ様は私にこの役目を与えたのだ。
生き残った一握りの聖域を守る闘士たちが白羊宮に集まっていた。先ほど攻め寄せてきた部隊は多大な犠牲を払って何とか討ち果たした。だが間もなく来るであろう次の一波はおそらくは防ぎきれまい。黄金のほかは白銀のケンタウロス星座のユーゴと数人の雑兵たちが残っているのみだった。アテナ様はこの私に、その者たちを連れてここから逃れろという使命を託したのだ。
「皆を連れてお行きなさい!」
教皇や他の黄金聖闘士とともに十二宮を登る石段に足をかけながら、アテナ様は厳しく、それでも優しさをこめた声で振り返って言った。励ますように、その顔に笑みさえ浮かべて。若い者を安全に逃がし、機会を待つようにと。この地上にそんな場所が残っているかは疑問だったが。
聖域を離れる道を進みながら、アヴニールは唇をかみしめた。次々と残った黄金聖闘士の小宇宙が消えて行くのが感じられる。少し前に射手座が、いましがたは天秤座が。それでも足を進めようとしたその時。
激しい衝撃を感じた。アヴニールは雷に打たれたように立ち止まった。今までとは比べようがないほどの喪失感。そして訪れる圧倒的な虚無感。
「アテナ様の小宇宙が消えた…?」
十二宮の頂上あたりから次々と冥闘士の小宇宙が飛び去っていくのが感じられた。一拍置いて禍々しいハーデスの小宇宙も。こちらには一顧だにせず。
「馬鹿な…」
聖域を覆っていたアテナの結界がかき消えていた。気のせいであってほしかった。だが気のせいではなかった。瞬間移動ができるのがわかった。それが意味するものは。アヴニールはアテナから受けた使命を忘れた。そして仲間とともに一気にアテナ神殿まで飛んだ。
アテナ神殿に立っていた巨大なアテナ像は根元から斬り倒され、破片は粉々になって散らばっていた。これではアテナの聖衣は顕現できなかっただろう。この像がアテナの聖衣であることを知った冥界側の所業に違いなかった。そのほかの建物も破壊しつくされていた。神殿の残骸の中に倒れている鎖とハーデスの符で拘束された教皇の法衣の体ともう一つの体。その横に無造作に転がっているそれは。長かった髪が切られ力を封じられていたことがわかる、それは。
喉から怨嗟と慟哭の声が迸り出ていた。
眼下で炎の半球が次々に爆発するようにふくれあがり広がってゆく。世界は燃えていた。
神よ、時の大神よ、この世界を、この時を――!
*
「おい、大丈夫かよ」
シオンは目を開けた。
「…マニゴルド?」
「テメェがぶっ倒れてるってあいつが呼びに来たんでな」
マニゴルドがあごをしゃくった先、少し離れたところにアルバフィカが立っていた。
「ま、積尸気に行かなきゃなんねえような状態じゃなかったようだな。だがあんまり聖衣の記憶に深入りしすぎんなよ。テメェはあのジジィどもほどタフじゃなさそうだしな」
「ああ、大丈夫だ」
あの悪夢の未来は決して起こさせない。至らせない、あの絶望には。たとえ自らが存在しなくなっても、この聖衣に刻まれた記憶だけになって修復師にしか知ってもらえなくなったとしても、アヴニールもそう望むだろう。私たちの思いは一つだ。牡羊座の聖闘士として。
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シオン外伝、特にアヴニール・パートは「歴史改変」というものが絡むだけに、いろいろ疑問があります(話の出来が悪いという意味ではない)。そこを想像して埋めてみるのが二次創作の醍醐味でもあるのですが。
アヴニールさんたちを過去に飛ばしたのはクロノスらしいけど、クロノスはなぜそんなことをしたのか。カイロスが変えてしまった歴史を「あるべき姿」に戻そうとしている? ムウではなくアヴニールが牡羊座の聖闘士になっているのは、カイロスが歴史改変した説をとってみました(カイロスは出ないけど)。
アヴニールさんたちは死後元の時代に帰れたのか? 彼らはそれを願っていたらしいけど、その場合、元のままの世界に帰るのか、何か変化した世界に帰るのか…。前者の場合、ハーデスに滅された世界で人間が生き続けることはできるのか?
そもそも歴史が改変されなかったらアヴニールさんたちはどうなっているのか。時間が分岐して生き残った聖闘士として聖域を支えていくのか、牡羊座がムウ様になる我々の知っていた未来になるのか? 後者の場合、アヴニールさんたちは一般人として生きているのかもしれないけど、私はどちらかというとアヴニールさんの存在そのものがなくなってしまう派です。
そしてムウ様のいる未来になった場合、牡羊座の聖衣に刻まれた「記憶」はどうなっているんだろう。「存在しなくなった未来」をともなうアヴニールの記憶は。
牡羊座の聖衣は、「この時代の戦死した牡羊座」(って今老双子編に出てるあの人だよね?)の聖衣と同一化しているんだろうか? アヴニール出現後、安置してあった白羊宮から忽然と牡羊座の聖衣が消えているに一票。
考え出すと深いです…。
外伝単行本最終16巻巻末おまけ漫画にて、ゲートガードさんの闇落ちした聖衣からアヴニールさんが出現したことがわかりました。
これで二つの牡羊座の聖衣が存在する、ということはなくなって一つに統合されたと考えて良いのでしょうか。「聖衣の記憶」は多少混乱してそうですが…。(2016.6.28追記)
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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