「道の途上」への拍手、ありがとうございました!
ラカエル書きの一人に数えてもらえたでしょうか。
ハスガード(アルデバラン)とシジフォス。背景にレグルス、アスプロス。
本編イリアス回想(聖戦10年前)からアスプロスの乱(2年前)まで。
オリキャラは出ません。
LC外伝10巻シジフォス編のほか、セインティア2巻とND9巻が同日発売。
LC外伝は双子座デフテロス編が終わって来月からはなんとアスプロス編! やった!
映画「LEGEND of SANCTUARY」も公開です。ネタばれ感想はこちらへ。
手代木先生の原画展も行ってきました! アスプロスがかわいいですねえ…
ハスガードの意気消沈ぶりは、傍から見ても気の毒なほどだった。
やっと見つけた『英雄』イリアスだけでなく、思いもかけず見出したその子レグルスも連れ帰れなかったからだ。冥闘士がもう戻って来ないとほぼ確信して護衛していた村人のそばを離れられるようになったときには、レグルスの姿が見えなくなってからかなりの時間が経過していた。その行方は杳として知れなかった。ハスガードが見つけたのは、一本の木の根元に残された大量の血の痕のみだった。小宇宙の途絶え具合からして、そこが、獅子座の聖闘士イリアスの絶命の場所と考えてまず間違いなかった。だがイリアスの体も、獅子座の聖衣も、そしてレグルスも、そのときのハスガードにはいくら探しても見出すことはできなかった。
「君のせいではないよ、ハスガード」シジフォスは戻ったハスガードの肩に手を置いた。「兄さんは肺を患っていた。実のところ、もう生きてはいるまいと思っていたよ。むしろ君が会えて、少しでも消息を伝えてくれて嬉しい。生身の兄さんとはもう会えないだろうけど…でも兄さんはいつか帰ると約束してくれた。どんな形かはわからないけれど…いつか、きっと」
ハスガードはそれ以降、一層自分に厳しく任務にあたるようになった。なかでも子どもが絡む場合の気迫はすさまじかった。その副産物として何人もの子どもを見捨てられずに聖域に連れ帰る羽目になり、無器用にその子たちの面倒を見たり落ち着き先を探してやるために奔走したりするさまから、ほどなくハスガードのことを『英雄』を取り戻せなかった無能者とそしる者はいなくなった。聖闘士になったころからひどく冷笑的になったアスプロスが、ときおり皮肉めいた表情を浮かべる以外は。
「この響鳴は…!」
それから五年、ついに獅子座の聖衣とその遺児が見つかった。レグルスが、肉体的にも精神的にも厳しかったであろうその五年間をどのようにして過ごしたかを知る者はいない。少年は何も語らなかったからだ。その間の鬱屈がどれほどのものであったにせよ、聖域に現れたのは明るい笑みを浮かべる人懐こい少年だった。レグルスは同年代の候補生仲間をはじめ聖域の人々とすぐうちとけ、とりわけ無事再会できたことを喜んだハスガード改めアルデバランには、目の中に入れても痛くないかのようにかわいがられた。レグルスの聖闘士修行の師は正式にはシジフォスだったが、黄金の最年長者として多忙なシジフォスに代わり、しばしばアルデバランも面倒を見た。レグルスはすぐさま頭角を現し、聖域に来て三年後、わずか十三歳で聖闘士となり獅子座を継いだ。『英雄の息子』だからと陰口をたたく者はほとんどいなかった。レグルスは誰の前でも飾らず、好意を持たないではいられない笑顔だけでなく、その抜群の能力をも見せていたからだった。自分のような思いを味わうのではと秘かに懸念していたシジフォスは、ほっと胸をなで下ろした。
「あの性格、少々羨ましいがな」
昔なじみのアルデバランにそんなことを言ったが、シジフォスの目は嬉しそうに笑っていた。
だがレグルスが黄金になり、十二人が揃ったその矢先に、聖域には兇事が起きた。ともに歩んで黄金になることを誓い合った双子座のアスプロスが逝ったのだ。それも教皇に対する叛意を示してという最悪の形で。
真っ直ぐで礼儀正しい少年は、いつのころからか慇懃無礼な付き合いにくい男になっていた。それでも周囲の者にはそつなく完璧に振る舞い、その嫌味の言葉を聞くのは昔からの仲間であったシジフォスとアルデバランぐらいのものだった。そのことはむしろこの二人を認めての裏返しの信頼だったのかもしれない。アスプロスの死後、ごく一部の者のみが知っていた、隠されていた弟の存在が黄金聖闘士たちに知らされた。神託というものについてアスプロスが見せた激しい嫌悪感を思い出し、シジフォスはアスプロスの悩みの一端を初めて知った思いだった。だがそれだけが、あの潔癖な少年を歪めたのだろうか?
「あいつも俺たちに少しでも打ち明けてくれていれば良かったのにな」
アルデバランの言葉にシジフォスは複雑な表情をした。
「自分で解決しようとしたのだろう。誰かを頼るのはあいつのプライドが許さなかったのだろうな」
今は屈託なく笑うレグルスも、父親の死を眼前にしたという。先日ふとした折に、シジフォスはレグルスの心の奥底に燃えている冥闘士に対する激しい闘志を垣間見たことを思い出した。
「誰しも何か抱えているものだな…」
さまざまな経緯で聖域に集った聖闘士たち。その思いの上に、間もなく聖戦が始まる。
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本編の若ハスガードとイリアスの出会いを読んで、ハスガードの無念とそれに対するシジフォスの対応を書いてみたいと思っていました。
ハスガード外伝、そしてシジフォス外伝でアスプロスを含む「年長組」のばりばりの絡みが出たので、すぐ書かなくて良かったです。
外伝シジフォス編発売なので解禁。アスプロス編でまだ何か出るかもですが。
時系列とハスガードの年齢はこんな感じですよね。
シジフォス外伝(17→16年前:11→12)→イリアス死(10年前:18)→ハスガード外伝・改名(8年前:20)→レグルス発見(5年前:23)→レグルス獅子座に/アスプロスの乱(2年前:26)
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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