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―KEN NO CHIKAI― since 2010.10.23
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Posted by MCBT - 2014.07.25,Fri
※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

「種子の行方」への拍手、ありがとうございました!
いつも嬉しいです!


うちのオリキャラヒロインとエルシド、主役二人の共闘バトル。


※ここに残してはおきますが、「慟哭」の章と入れ換えて主編に組み込みました(2015.2.14)。※


拍手[1回]


---


 聖戦も本格化しつつあり、冥闘士の出現がちらちらと聞かれるようになっていた。冥闘士以外にも、冥界の気にあてられたかのように、ときおり化け物の出没が伝えられていた。そのため、聖闘士の多くは各地を哨戒するようになっており、ティソナもしばしばその任についた。強力なものが出たという場所には黄金聖闘士が出撃することもあった。
 今日もそんな任務についていたティソナは、近辺に数日前から連絡が取れなくなった村があるという話を聞いたことを思い出し、そちらへ向かってみることにした。
「…っ!」
 村には異臭が立ち込めていた。倒れている遺体のいくつかは変色し、不気味な斑点が浮いている。焼かれた形跡もあり、家々の壊され方も激しい。毒や火を使う、それもかなり大きなものが暴れまわったしるしだ。
 これは…私一人の手に負えないかもしれない。それでもどんなものが出たのか確かめておかなくては。ティソナは慎重に辺りを窺いながら進み始めた。

 ほどなくして、ティソナは何か大きなものが周囲の木や草を薙ぎ倒しながら進んだ跡に出くわした。
 その跡を確かめていると、唐突に赤ん坊が泣くような声が聞こえてきた。この先の村の子どもか? だが妙に一本調子なのが気になった。赤ん坊なら親の声も聞こえそうなものだが…。すると少し離れたところからもつられたように子どものすすり泣きが聞こえた。途端、赤ん坊の声はぷつりとやみ、その方面から邪悪な小宇宙が立ち昇った。子どもの泣き声がしたところからも抑えていたらしい小宇宙が守るように燃え上がったのが感じられた。この小宇宙は…!
 動き出した邪悪な気配を追うと、化け物の背が見えた。胴体は山羊のようにも見えるがずっと大きく、頭は獰猛な肉食獣のそれで、尾は鎌首をもたげた蛇だった。神話の化け物、キマイラがこんなところに…! 村から迷い出てきたらしい二人の子どもとともにいるのは黄金の鎧を纏った姿。子どもたちは恐怖の余りその聖闘士にしがみつくようにしている。あれでは満足に腕が振るえない。
 子どもに向けて化け物が火を吐いた。守り手の聖闘士はその攻撃は防いだものの、不十分な体勢の間を狙って尾の蛇が襲いかかった。子どもをかばうために上げた右腕を、蛇の牙が抉る。
 ティソナは化け物の後ろから技を放った。子どもたちに害が及ばないようにあまり強い技は使えない。化け物がこちらに向き直る。引き離さねば…! 立て続けに技を放ちながら背走する。化け物はうまいこと食いついて追ってきた。巨体にもかかわらず足が速い。このままでは遠からず追いつかれる。少し行ったところで立ち止まった。怖ろしげな顔で唸りながらキマイラが距離を詰めてくる。ティソナはすくんでいると見せて動かずに『それ』を待った。右手から鋭い剣圧がやってきた。タイミングを見据え、ぎりぎりのところでティソナは後方に跳び離れた。だがキマイラも素早く跳び下がっていた。
 目の前に深い裂け目が穿たれた。向こう岸になった場所でキマイラは咆哮すると、向きを変えて走り去った。

 激しい剣圧で擦過傷になりかかった腕をさすりながらティソナは近づいてきた人影を振り返った。
「ティソナか。お前がここにいるとはな」
「エルシド様! その腕は…!」
 エルシドの右腕の傷は深く、血が滴っていた。
「不覚を取った。しばらく周囲の警戒を頼めるか」
「はい!」
 ティソナはグリタリングサークルのリングを二人の周辺に巡らした。エルシドは上半身の聖衣を解除すると、ためらいなく自分の星命点を突いた。傷口から血が迸る。
「…!」
 ティソナは息を呑んだが、黙ったまま警戒を続けた。キマイラの尾には毒があると言われている。それを抜き取るために違いない。
 しばらくして血が止まると、エルシドは何事もなかったような顔で再び聖衣を纏った。
「大丈夫…ですか?」
 エルシドはそっけなくうなずく。かなりの量の血を放出したのだ。決して『大丈夫』なはずはないが、今は戦いのさなか。
「先程のは…」
「時間を稼いで接近を妨害するためだ。お前なら気づいてよけられると思っていた」
 予期していたのをわかっていたのだ。その信頼が嬉しかった。
「あの子どもたちは…?」
「その場を動かずにおとなしくしているように言い含めたが」
 小さな子どものことだ。長くはもつまい。エルシドの体調も万全ではない。早めに決着をつけないと。
「今度現れたときに決めるぞ」エルシドも考えは同じであるようだ。
「はい!」
「あいつの動きは速い。足を止める隙を作るために、姿を見かけたら連続で技を放て。だがくれぐれも間合いを詰め過ぎるな」
 ティソナは仮面の下で表情を引き締めてうなずいた。自分の技はエルシドのものほど射程が長くない。攻撃を相手に届かせ、なおかつ間合いを保つのは至難の業だ。だが困難でも、要求されたものには何としても応えたかった。とはいえあの尾はくせものだ。力が強そうな巨体からの攻撃も受けたらただでは済むまい。自分まで負傷しては、保護すべき子どものほかにさらに足手まといをふやすことになる。威力を犠牲にしても軽いが遠くからでも届く攻撃を、自分の信条である動きの素早さでしかけるしかない。相手に勝る素早さで。自分の役目は敵を一人で倒すことではない。
「行くぞ」
 二人は地面を蹴って、裂け目を跳び越えた。

 キマイラは裂け目を越えられる場所を探してうろついているようだった。微かに唸り声が聞こえる方へ進む。近い。エルシドが足を止めた。ティソナはエルシドにうなずくと跳び出した。
 化け物の姿が目に入った。ティソナは高く跳びあがると、上方から技を撃った。キマイラは首を振りあげ、咆哮とともに火炎を吹いて対抗してきた。
「くっ」
 すんでのところで炎をかわした。平気な顔をしていても負傷しているエルシドにあまり移動の負担をかけたくない。もっと引きつけて…!
 自分に範囲攻撃がないのが残念だったが、左右から素早く攻撃を繰り出しては離脱する。鞭のようにしなって襲ってくる尾の蛇を避けつつ吐かれる炎をよけ、振るわれる強力な前足をかわす。危険を承知でそば近くまで踏み込んだと見せ、技を放って跳び離れる。これを繰り返し、じりじりと位置を移動する。
 苛立ったキマイラは一声大きく咆哮すると、ものすごいい勢いで跳躍して間近に迫ってきた。その足が地につき、前足と尾が振りかざされた瞬間。目の前が黄金の輝きで覆われた。エルシドの斬撃が、その胴体を真っ二つに叩き斬っていた。
 斬り飛ばされた前足と尾が体をかすめて落ちてゆきながら、落ちるそばから塵に返っていった。巨大な獅子の頭も山羊の胴体も、見る見るうちに塵と化して消えていった。やはり自然の生き物ではなかったようだ。ティソナは息をついた。エルシドがゆっくりと後ろから現れた。その顔に浮かぶ微かな笑み。
「上出来だ」
「エルシド様、腕は…」
 威力と正確さを期して、エルシドは負傷している利き腕の右で技を放ったため、一度は止まっていた血がまた滲んできていた。
「問題ない」
 エルシドは言ったが、ティソナはそっと手を当てて自分の小宇宙を注いだ。エルシドもそれを拒まなかった。
「子どもを村へ送ったら聖域へ帰るぞ」
「はい」
 共に戦えたことが嬉しかった。この人とともにあることが、私の生きる理由だから。


---


「共闘」のタイトルは、実は一周年記念の「年中組」共闘話「風の一日」で使おうとしていたものでした。でも、もしうちの主役二人で共闘することができたらそっちに使いたいと思って取っておいたものです。
聖戦本格化前のこの時期に、聖闘士が一対一でなくてもいいような強い敵は…と思って神話上の化け物を出してみました。
しかし黄金と下級聖闘士との共闘って普通はあり得ないよなあと思って、本編10巻のテンマくんとの共闘を参考に、エルシドさんにハンデつけてもらいました。

なんだか自分の中のキマイラのイメージが『オズの魔法使い』のカリダーなんだけど。カリダーも架空の生き物なんだけどね。
キマイラが子どもの泣き声のような声で鳴いておびき寄せる、というのは捏造です。十二国記に出てきた中国由来の化け物にそんなのがいた気がしますが。
聖闘士と等身大の人間形でないものとの戦いって案外ないんですよね。参考にしようと「ギガントマキア」読み返してみましたが、「キマイラ」とかは名前だけで人間形でした。むしろ「エピソードG」を読み返すべきだったか。
映画「LoS」では巨大ゴーレムみたいなのと黄金さんたちが戦いましたね。

ずっと書こうとしていて書き差しのままだったものがやっと書けました。
その割に戦闘シーンがあっさりになってしまって食い足りない気もしますが…。
主編の全面改訂も少し前にやったし、これでオリキャラヒロインがメインになる話は大体書きたかったものは書けたかと(この話もしばらくしたら主編に組み込むかもしれません)。
読んで下さった方、ありがとうございました。
外伝関連話は最後までやるつもりですし、中絶中のお題や学パラ、その他突発に思いついたらオリキャラの絡まない話を中心にまだぽつぽつやるかと思いますので、更新が滞ってもサイトを消す予定はありません。
これからもよろしくお願いします。


原作外伝が残り少なくなって寂しいです。
アスプロス外伝で聖域に戻ったアスプロスの教皇選対抗馬のシジフォス絡みとか、シオン外伝でハクレイさん絡みとか、何かでエルシドさんがちらっとでも出ないかなあ…!
アニメ第三章・第四章もあきらめずに待ってます!
 
 
 

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自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

何かありましたら
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まで(★を@に)。
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