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「エルシド先輩はお休みの日何をしてるんですか? あ、剣道の稽古のほかにです」
「そうだな…」
エルシドはちょっと考えた。
「ときどき山歩きするくらいか…山と言ってもハイキング程度だがな」
「あ、いいですね。私もどこか行ってみたいんですけど、今まで山って遠足くらいでしか行く機会がなくって」
「今度ちょっと行くか?」
「行きたいです!」
ティソナは目を輝かせて答える。
「装備は持ってないよな…週末にでも揃えに行くか」
「よろしくお願いします!」
駅前で待ち合わせて、登山用品・アウトドア用品の専門店へ向かう。ティソナはこういう店は初めてなので、物珍しそうに店の中を見回す。
「まずは靴かな」
店内にある分厚い靴下をまず買って、それをはいて足にあうトレッキングシューズを探す。それからザックや山用の雨具、ほか細々したものを選ぶ。
「いろいろあるが、大丈夫か?」
「大丈夫です! このことを話したら軍資金たっぷりもらえましたから」
「そうか」
一通り買い終わった。この店にはピッケルとかザイルとかが置いてある本格的な登山のコーナーもあった。
「そのへんはいらないだろう」
エルシドが言っているところに、そこからひょっこり知った顔が出てきた。
「なんじゃ、おぬしらも買い物か?」
エルシドと同学年の童虎だ。口調が妙に爺くさいので「老師」のあだ名がある。
「ちと早いがこの冬に実家に帰ったときに裏山にでも登ろうと思ってな」
「合宿か?」
「いやあの山に後輩を登らせて遭難させるわけにはいかんからな。わし一人でじゃ」
童虎は豪快に笑いながら言った。童虎が所属する聖域学園の「ハイキング部」は、実質「登山部」と呼ばれていて、冬山登山をはじめハードな山登りをするので有名なのだが、その部員が遭難しそうな「裏山」って…。ティソナは激しく疑問に思ったが口には出さないことにした。
「おお、せっかく二人でいるのを邪魔してはいかんな。ではな」
童虎は片目をつぶって、店の奥の登山相談所の方に歩いていった。ここでは馴染みらしい。
「買いもらしたものはないか」
必要なものをあげながらエルシドが聞いた。
「大丈夫だと思います。予算ぎりぎりでしたけど。…あ」
ふと、近くにぶら下がっている小物に目が留まった。
「…かわいい」
ザックにつけるマスコットだろう。きれいな色とユーモラスな表情に思わず手に取って見入った。
「それか」
つとエルシドの手が伸びてフックからそれを取り、レジの方に持っていった。
「あ、別に必要ってわけじゃ」
「今日は何もしていない。これくらいおごらせろ」
振り返らずにエルシドが言った。
「ほら」
会計が終わってマスコットを差し出す。
「ありがとうございます!」
お礼には、満面の笑顔で。
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これもデートの一種だよね。
ハイキング本番はいずれまた。
買い物のリードしてるから「何もしていない」わけじゃないんだけど、ひそかに半額ぐらい補助しようと思って来ていたので、ちょっと物足りない気分だったんだよね、きっと。
私の学パラに他の黄金さんが出たのは初めてか?
…童虎さんは長野の何とかアルプスあたりに住んでたのか?
きれいに終わっちゃったので書き損ねたけど、
「靴は少しはき慣らしておけよ」とかアドバイスもしてくれるんだよね!
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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