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―KEN NO CHIKAI― since 2010.10.23
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Posted by MCBT - 2013.12.30,Mon
※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

一人エルシド祭り、後半戦の第3戦、最終戦の前編。遅くなった上になんと分割です。
原作外伝のラカーユ関連話、親父さんパートを独立させました。
一緒に出そうと思っていたのですが、ラカーユパートの完成が年を越しそうなので先に出します。
ラカーユパートを出すときに修正あるかも…。

外伝の物語とその前後。
オリキャラは出ません。
 


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 ラカーユは刀剣の類が好きだった。鍛冶の仕事を見るのも好きで、小さい頃からそばに来て熱心に見入っていた。特に口で教えたりはしなかったが、見ているときはことさら丁寧に仕事をやってみせたりしたものだ。いずれは仕事を継がせるつもりだったし、あいつもそのつもりだったようだ。だが、ラカーユの作った剣を見て気が変わった。いや、気を変えたというより、あれは…無理だ。あれだけよく見ていて何故これだ…と思うのだが、仕方ねえ、人には向き不向きっていうものがあるんだろう。母親とは、顔だけじゃなく不器用なところも似ちまったのかもしれん。
 こんなご時世だからと剣の手ほどきも一通りしたが、筋は悪くないようなのにそれも何か違う気がした。目も良く勘もいいようなのに、どこかそぐわないのだ。能天気な性格だし本当に切迫した場面に遭っていないというのもあるだろうが、何か「これではない」という感じがしてならない。あいつの行く末が少々気にかかりだしたとき、あのできごとがあったのだ。

 カタラニアが忽然とできてから、そこで催される闘技大会目当てに腕自慢どもがたくさん集まるようになった。だが中にはごろつき同然の者もおり、武器や武具の扱いもいい加減な輩が多かった。汚れを拭う程度の手間もかけないでいて、錆びた剣を「使えなくなったから何とかしろ」と言ってくるような連中が大半だ。こちとらも商売なので引き受けはするが、取りに来る者には相応の料金を払わせてやっていた。今日も一山の錆の浮いた剣をとりあえずラカーユに洗いに行かせたが、あいつめ、どこで油売ってやがるんだ。しかし今日は闘技大会当日、揉め事に巻き込まれていると厄介だ。様子を見に行くと、案の定、人だかりの中にあいつの頭が見えた。水飲み場を壊して、巨漢が一人ぶっ倒れているそばだ。どなりつけると妙に焦って言い訳をしようとした。持っている剣が一本だけ、たったいま研ぎあげたようになっている。これは…?
 そこへ、一人の男がすっと進み出てきた。
「見事な剣でございました」
 目つきが鋭く落ち着いた物腰だが、よく見ればまだかなり若い男だ。大きな荷物を抱えているが、見たところ剣や武器は持っていない。
「最近の若ぇのは剣の扱いは―そりゃあ酷くてな…」
 わざと挑発するように言ってみる。するとその男は、まだ水の流れている地面に膝をつき、丁寧に詫びたのだ。そして言った。自分もまた己自身を一本の剣として完成させようと生きる身であると。なにやら風変わりな物言いだったが、久しぶりに面白いことを言う武人だった。気に入ったので、餞別に剣と忠告をくれてやることにした。どうやったのかは知らんが真っさらのようになった剣と、めったに他人にはしない忠告を。
「おい、何ぼさっとしてんだ」
 ぼーっと見送っていたラカーユをドヤしつけた。
「え…!?」
「あのお人について行ってやんな。腕っぷしは問題ないだろうが、この町は初めてみてぇだ。案内ついでに色々学ばせてもらってこい。闘技大会ではめったに見られんものが見られるだろうよ」
「え? いいの? わかった!」
 ラカーユはすっ飛んでいった。よくできた剣を眺めるときと同じように、目を輝かせて。

「親父、俺、エルシドさんについて行くから!」
 帰ってくるなり、ラカーユは自分のものを引っ掻き回しながら荷造りを始めた。荷造りといっても着替えの服やら何やらを詰め込むだけだったが、手を動かしながらも今日の闘技大会であったことを興奮しながらしゃべっていた。家の外に、あの武人が立っていた。遠目でも、顔に前にはなかった傷がついているのがわかる。ラカーユの話からすると顔だけではないのだろうが、平然と例のでかい箱をしょっていた。腰に、くれてやった剣の他にもう一本、東洋仕立ての刀を差している。
「おい、ちょっとそれを見せてみな」
「これを…ですか」
 その刀は研ぎかけのまま放置されていたようで、ひどく錆びていた。
「何かいわくがあるんだろうが…このままにしておくのもなんだ。あいつの支度を待っている間に研いどいてやるよ」
「…何も礼ができないのですが」
 男は少し困ったように言う。
「なに、あいつをその、何とかいう所に連れてってくれる代だ。別にその後の面倒までみてくれとは言わねぇ。あとはあいつ次第だろうからな」
 男は黙って頷いた。
「…ちゃんと仕上げていりゃあ、いい業物になっただろうにな。この刀を鍛えたのはお前さんの昔の知り合いか何かか?」
「はい。互いに極めることで競い合っていた、好敵手のような者でした」
 過去形での言葉。悼むように、わずかに辛そうに。だがその口調に静かな決意を込めて。その者の夢も持って、先へ進むと。
 研ぎ具合を確かめていると、どこかで見た技(て)のようなのが気になった。いや、まさかな。『カタラニアの美姫』は東洋風の拵えの姫だったと聞いたが、まだ若い女人だったという。
「お前さんにそんな相手がいたとはな」
 男は懐かしむように、微かに笑みを浮かべた。どこかから、この男には一見似つかわしくない、異国の花の香りがしたような気がした。
 ラカーユは元気に別れの手を振って出て行った。話に聞いたところでは聖闘士とやらはなかなかとんでもないものらしい。あいつがそんなものになれるかどうかはわからんが、確かにあいつはここではどこか収まりきれないところがあった。まあこれも何かの縁ってもんだ。新しい場所で、できればあの男の力になれれば御の字だろう。そうでなくても、何かの道が見つけられればそれでいい。あの男もまだまだ道なかばのようだしな。
 しかし、剣と忠告はくれてやってもいいと思ったが、息子までやることになるとはな。
 ま…二人とも、せいぜい頑張れよ。


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親父さん書くのが思いのほか楽しい。名前ないのが惜しい。本当に、奥さんどんな人だったのよ。
研ぎ料が高いなんて言う奴には、その貫禄できっとちゃんと払わせるんだね!

書いていて、峰さんのお父さんとラカーユの親父さんはもしかして知り合いだったりしないかなーと妄想が走りました。「東洋」つながりでさ…。

峰さんの刀をラカーユの親父さんに研いでもらう、というのはS様の出された本から使わせていただきました。他にもいろいろ無意識に参考にしている気が…。ありがとうございました!

エルシドと、エルシドに縁があった人たちとのことを書こう!という一人エルシド祭り、ラカーユで終了しようとしたら親父視点の部分が長くなったのでラカーユ視点の部分から分けてみました。

シジフォス→テンマ(×2)→峰→フェルサー→夢の四神→ラカーユの親父さん
最後(今度こそ!)はアニメ・外伝含むラカーユ原作補完話の予定です。
 

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プロフィール
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MCBT
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非公開
自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

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mcbt★br4.fiberbit.net
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