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「……おー、やっぱ主席で卒業かあ、やるじゃん」
「振り回すんじゃない、お前はもう少し落ち着きを覚えるべきだ」
受け取ったばかりの卒業証書を振って駆け寄ってくる友人に、デジェルはいつもより若干穏やかに応えた。
「そう言うなよ、俺なんてもう卒業できただけでカンゲキ、カンドー、羽目外したくもなるってもんさ」
「ならば尚更大事にしておけ」
まったく、最後まで呆れさせてくれる。知らず知らずの内に自分を棚に上げて一人ごちていると、カルディアがふと表情を直して言った。
「──なあデジェル、俺、これから海渡るのよ。大学とかじゃないんだけどさ」
「……手術か?」
「なんだ、バレてやんの」
ちろりと舌を出して笑う顔が、少し苦しげに見えた。
「でさ、八割ちょいぐらいなんだよ、成功確率っての? 成功したらいいけど、失敗したら生きてても一生日本に帰れないかもー、って」
「……ああ」
いつもその存在すらひた隠しにしていた彼が、こうして自分の病のことを語るのは珍しい。何が言いたいのだろうと笑みの底を垣間見ようとするより早く、「だからさ」、とカルディアが向き直った。
「お守りくれよ、お前の第三ボタン」
ずいと手を突き出して、にんまりと笑った顔にもう陰は見えない。一拍分大きく眼を見開いてから、デジェルはくすりと苦笑した。
「……そういう事は、もっと素直に言えばいい」
ぷちりと制服からボタンをもぎ取って、親友の手に乗せる。
「いや、何か真正面から言うとくれないんじゃないかなー、とか思って。……ってかだいぶ本気だし、俺様だって怖いときゃ怖いのよ」
「馬鹿を言え、何年来の腐れ縁だと思っている……カルディア、」
少し照れくさそうに言ったカルディアへ、デジェルは言い募った。
「きっと上手くいく。だからお前の第三ボタンは、帰国してから私にくれ」
今度はカルディアがぱちくりと眼を見開く。
「お前、外国の大学行くとか言ってなかったかぁ~?」
「ああ、だから卒業してからだ。手紙は出してやるからそれまで待て」
「……気の長いやっちゃ」
あーあとわざとらしく息を吐いて、証書を天高く突き上げた。
「よっし、ちゃんと待ってろよー!」
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えーとここは日本なのか。
まあ名前とか金髪とかあまり追求しちゃいけないよねそうだよね。
デジェルさんの実家は北海道なのかな。
ボタンをやり取りする習慣って本当に/今でもあるのか?
「年中組」と「年少組」は便宜上同じ学年です。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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