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エルシドが宝瓶宮に入ると、先客がいた。蠍座の黄金聖闘士、カルディアだ。
「すまん、先日借りた本を返しに来ただけだ」
「いや、こちらの用はもう終わったところだ」
エルシドは椅子から立ち上がったデジェルに本を渡した。
「役に立ったか?」
「ああ」
カルディアはげんなりとした顔で、その分厚い本を眺めた。
「あああ~あんたもそんなもの読んでんのか」
「失礼だぞ、カルディア」
デジェルがたしなめる。
「邪魔したな」
エルシドが宝瓶宮を辞そうとすると、カルディアも立ち上がった。
「俺ももう行くわ」
「ああ。…気をつけろよ」
少し心配そうにデジェルが声をかける。
宝瓶宮の外に出た。エルシドは隣を歩くカルディアの方を見た。明るいところで見るとはっきりした。
「これから任務か? …顔色が悪いな」
「いつものことさ。問題ない。デジェルにおまじないもしてもらったし」
何でもないことのようにさらりとカルディアは答えた。カルディアはどこか体が悪いらしいということは聞いていた。親友のデジェルは事情を知っているのだろう。だがカルディアがそのことのために任務をおろそかにしたことはないし、その言動からいい加減に見えるが腕も確かだ。
「あんたこそ、その足さっさと直した方がいいぜ」
エルシドは少し驚いた。確かに、昨日まで行っていた任務の傷があった。だが聖衣の下の傷だし、ことさら足を引きずっていたつもりもなかったのだが。
「かわいい部下たちが心配するぜ? 特に、あの女の子とかさ」
カルディアはにやっと笑って仏頂面のエルシドに手を振ると、十二宮を降りていった。
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ハーデスに射られ、夢界に囚われていたシジフォスが目を覚ました。シジフォスを囚え、ハーデスに因縁のあるペガサスをも狙っていた夢の四神は退けられた。だがその代償は安くはなかった。山羊座の黄金聖闘士が帰らぬ人となったのだ。
「神とやりあって相討ちか…派手なことしてくれるじゃないか」
カルディアは主のいなくなった磨羯宮の方を見上げた。
「全くどいつもこいつも病持ちの俺より早く逝きやがって…。まあ多分俺ももうすぐだろうけどな。それまで待ってろよ」
カルディアは窓辺から離れながら、そっとつぶやいた。
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デジェル話と一本にしようかと思ったけど、「神と戦う」っていうのにカルディアは引っかかると思ったので、それをオチにしてみました。「病持ち」っていうのも。
カルディアくんは目ざとくて勘はデジェルさんよりいいと思うからいろいろ気づいているかもしれないけど、余計なことはあんまり言わないと思う。エルシドは勘は良くないかも(笑)。でも気づいてもやっぱり余計なことは言わないタイプ。
カルディアくんは意外に気配りの人だと思います。いい奴だよね~。しかし、うちのエルシドさん、他の黄金さんたちにバレバレだろ。磨羯宮って上の方だから人目に触れやすいんだよね、きっと。
ミロがシュラと話してるところとか、なかったよなあ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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