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「シオン、通るぞ」
シオンが顔を上げると、魚座の黄金聖闘士、アルバフィカが白い薔薇の花束を持って通りかかるところだった。
「その、花は…?」
「これか」アルバフィカはふっと目元を緩めた。「…この花が表す言葉を知っているか?」
「いや」
シオンは首を横に振った。
「『心からの尊敬』だ。…彼女が好きだった花だ。今日はあの男が聖域に帰って来るというから、墓に供えておいてやろうと思ってな」
誰のことを言っているのかは察しがついた。
ある日の記憶が甦る。
彼が任務から帰ってきて、十二宮の入り口の脇の水場で喉を潤していたらしい時。ヘッドを取って顔をぬぐいながら遠くに見える修練場の方に目をやり、ふっと目を伏せて微笑みを浮かべた。普段は鋭いと言っていいほどの厳しい表情をしているのに、初めて見たその優しい面差し。
あれはまだ彼女の聖衣がここに戻って来る前。表向きは少しも変わっていないように見える。あんな表情をもはや見せなくなった以外は。
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白薔薇の花言葉ネタです。ちなみにピンクは「上品」「しとやか」「美しい少女」など。
シオン様の回想の中のエルシドの優しい笑顔について。回想シーンに出てくるくらいだから、きっと印象的だったんだよね…。
十二宮の入り口の脇に水場がある描写なんてありませんが、一息入れるためとか、教皇の間に報告に上がる前にちょっと身ぎれいにするためにとか。エルシドがヘッドを取るシチュエーションを考えました。入り口近くなら第一宮のシオン様の目にふれる機会もあろうかと。
シオン様とアルバフィカが原作で仲が良さそうなので二人出演も兼ねて。
ティソナと絡めなくても、エルシドと他の黄金との話を書いてみたくなりました。
原作ではシジフォスぐらいとしか接触がないうえ、性格的にすごく難しい人もいる…できたらいずれぼちぼちと。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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