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Posted by MCBT - 2011.01.17,Mon

※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

もしかしたらこんなことあったかも、という捏造過去。
エルシドはハクレイさんが連れてきたという裏設定があるらしいので。

あまり暗くしないようにしようと思ったけど、結構暗くなったかなあ…。
エルシド過去話、もう出ないと思うので思い切って出してみます。
もし何か出たら喜んで引っ込めるかも。
オリキャラは出ませんが、捏造過去はちょっと…という方はスルーでお願いします。
 



拍手[1回]


---


 両親の顔は、もはや定かには思い出せない。
 覚えているのは、髪を撫ぜながら膝の上で本を読んでくれたときの母のぬくもり。そばで見守っていた父の笑顔。具体的な顔の造作よりも、その温かい雰囲気が心の中に残っている。それだけが。

 父は地方の小村の領主だった。領主といっても本当にささやかな領地しかなかったので、農繁期には村人とともに働くような家だった。それでも父には武人として、領主として、領民と家族を守ろうという誇りがあった。母にも、その妻としての。
 その地方はその頃、散発的に起こる戦乱にしばしば見舞われていた。領主はわずかな手勢を率いてその村を守っていた。だがあるとき、全く質の違う何者かが村が襲った。守りきれぬと見て父は女子どもを山に逃がした。それをまとめていた母は皆が山に着いた後、一人戻っていった。村に残った者は全滅したが、山に避難した者たちは無事に村に戻った。だが皮肉なことに、村を守ろうとした主だった者がいなくなったことにより、村は荒れた。多くの者が村を捨てていった。
 少年は残った。といっても無人となった領主の館と山とを行き来する生活だった。両親を死へと追いやり村を荒らした者たちはしばらくして再び現れた。ただの無頼の傭兵などとは何かが違うのですぐわかった。何が違うのかはよくはわからなかったが、彼らは常人ではなかった。戯れにその辺にいた子どもを殺していた一人の男がこちらに迫ってきたとき。自分の中で何かがはじけ、無意識に右腕を振り下ろしていた。気づくとその男は足下に倒れていた。まるで剣で一撃を受けたように。自分の中に何かの力があるのを自覚したのは、それが最初だった。常人ならぬ者すら殺すことのできる「力」が。失ったものは返らない。だが新たな被害を及ぼそうとするものを止めることならできるかもしれない。少年一人の力では、すでに壊れていたものを支えきれぬとはわかってはいた。それでも村は、両親が守ろうとしたものだった。少年は村を捨てることができなかった。

 荒削りな黄金の小宇宙の炸裂。
 不穏な小宇宙を感じてやってきた老人は顔を上げた。暗黒に揺らめいていた冥闘士の小宇宙。それが一瞬で切り裂かれたように消滅したのだ。その場にたどり着くと、確かに冥闘士が倒れていた。鋭い刃で一刀のもとに断ちわられたような傷口。誰がこの冥闘士を?
 気配を感じて顔を向けると、一人の黒髪の少年が立っているのが見えた。無表情に老人を見ると、少年は何も言わずにきびすを返した。
「こやつを倒したのはお前か?」
 老人が呼びかけると少年はちょっと足を止めたが、そのまま姿を消した。

 そのあたりはしばしば冥闘士の襲来にさらされていた。ただでさえ戦乱で荒れた土地で、多くの民が家を捨てて逃げ出していた。恐ろしい化け物や悪魔のような戦士の噂が蔓延していたが、同時に、少し前から、別の噂もあった。誰かがその化け物を倒していると。それはある一つの村を中心としていた。その村も荒れており、領主もおらず、一家ごと行方が知れなくなっている家もあるという。大人だけでなく、子どももろとも。

 冥闘士の小宇宙を追っていて、再びその少年と遭遇したのは数日後。物陰から見守っていると、少年は小宇宙を剣のように揮って冥闘士の雑兵を斬り捨てた。雑兵一人なら加勢するまでもなかった。
「お前はこの村の者だったのか?」
 少年はちらとこちらを見たが、やはり無言のままだった。まだ幼さも残るのに、表情のない顔。さらに話しかけようとしたとき、これまでとは桁違いの闇色の小宇宙を感じた。これは…
「…ヒュプノス…!」
 巨大な力が膨れ上がる。老人は防壁を張って自分と少年を守った。はらわたが煮えくり返る思いがするが、今は手が出せない。衝撃が鎮まって村の方に目を向けると、少年が息を呑むのがわかった。今まで村があったところは薙ぎ払われて廃墟と成り果てている。あれではわずかに残っていた者も、もはや命ある者はおるまい。何か探しにでも来たのだろうが、用が済んだのか、はたまた、戯れか、その辺り一体を殲滅しつくして去って行ったようだ。見ると、無表情だった少年の顔に変化が見られた。圧倒的な神の力を前にしての、激しい怒りと焦燥感のようなもの。

「わしと来ぬか、少年よ。聖域へ」
 村の廃墟を見下ろしながら老人は言った。
「お前は独力でかなりの域まで小宇宙を操っている。だがそのままではまだまだ及ばないものがある。その力はもっと究めることができる。もっと多くの人々のために」
 少年は傍らの老人の顔を初めてまともに見つめ、口を開いた。
「あれに対抗できるのか」
「お前次第ではな」
 少年はちょっと考えているようだったが、決断は速かった。もうここにいる理由はなかったから。
「連れて行ってくれ。その聖域とやらに」
 老人はうなずいた。
「お前、名は何という」
「…何とでも」
 少年は肩をすくめた。
「ではお前をエルシドと呼ぼう」
 生地を離れて異郷で英雄と謳われた男の呼び名。以後、それがその少年の呼び名ともなる。
 そして少年は前だけを見すえてその地から歩み去った。一度も後ろを振り返ることなく。


---


なんか、ありがちですが。
10年前の16歳のときにまだ聖闘士ではなかったとすると、見出されたのは結構後だったんじゃないかなあという妄想。
えーと、ハクレイさんに会ったのが11~12歳頃、両親をなくしたのがその3~4年前?とかいうつもりです。
修行期間5~6年。3年くらいで黄金になったレグルスが「はやい」って言われてるので(年齢の話かもしれないけど)、ある程度小宇宙に目覚めた状態だったとしてもそれくらいはかかるかなあと。ロスキャンの人は無印より聖衣取るの遅そうだし。しかしテンマの2年は早過ぎるよなあ。 

実在のエルシドは小村の下級貴族の出だったらしいので、ちょっと使ってみました(実在のエルシドについてはこちらを参照のこと)。時代、かなり違いますけど。
18世紀のスペインがどんな状態かよくわからないのですが、国力が落ちてきていた頃で、スペイン継承戦争だのオーストリア継承戦争だのがあって、その合間もきっとごたごたしていた時期だったんだろうなあと思っています。

エルシドは「正義の人」って感じなので、良い家に生まれて真っ直ぐ育てられて欲しいです。辛い過去があったとしても、「愛と正義」が信じられる心を持った人として。できれば武人の家柄とかで。あ、これロスキャンのラダマンディスですね。『聖闘士星矢大全』によると、エルシドと同じ山羊座のシュラとラダマンティスの「FIGHTING ABILITY」の円グラフはそっくりだったっけ…。

 

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MCBT
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非公開
自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

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