忍者ブログ
―KEN NO CHIKAI― since 2010.10.23
[63] [62] [61] [58] [57] [56] [55] [54] [53] [52] [60
Posted by - 2024.05.11,Sat
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by MCBT - 2011.01.27,Thu
※当サイト初見の方はこちらをご覧ください※

主編「守り手」の章の前後。主編に組み込むべきかと思ったが長い。
久しぶりに我が家のヒロイン、ティソナの任務話。

※ここに残してはおきますが、主編「守り手」の章に組み込みました(2014.4.12)。※
 

 


拍手[0回]


---


 アテナ様から直々に依頼された任務だった。
 何としても果たさなくては。そして報告に戻らねば。

 ティソナが女神神殿に呼ばれたのは単独でだった。
 まだ幼さの残る女神が申し訳なさそうに、それでも切実な願いとして頼んできたこと。それは、女神が子ども時代を過ごしていた街に程近い街にある孤児院のこと。冥闘士が頻出している場所に近く、その街もいつ襲われるともしれなかった。折りしも孤児院を切り回していた神父がなくなり、たまたまそのことを知った女神は隣街の慈善家に話をつけ、子どもたちをそちらに引き取ってもらうことにしたのだった。その子どもたちを連れて行く役目だった。何事もないはずだった。思いもかけず早く、冥闘士が来襲しなければ。

 子どもたちは十人いた。
「じゃあ、行くよ。忘れ物はない?」
「俺たちに持ち物なんかないよ」
 子どもたちのリーダー格の少年がふてくされたように言う。それでも皆なけなしの身の回りのものなどを持っていた。
「ごめん、ごめん。じゃあ、これまでの感謝のお祈りをしたら行こうね」
 先ほどの少年を含め子どもたちは存外素直に、祭壇に向かってひざまづき、手を組み合わせて目を閉じ何事かつぶやいていた。ここで過ごした日々、優しかった神父さんのことなどに思いを馳せているのだろう。
 皆の祈りが終わると、ティソナは子どもたちを率いて出発した。街外れまで来たときだった。ふいに感じた黒い小宇宙。
「みんな、下がって!」
 ティソナは子どもたちの前に出て小宇宙を探る。一人ではない…! ここは聖域からかなり遠い。援軍を呼ぶ小宇宙通信は届かない。もちろん呼びに行っている暇もない。守りきれるか? いや、守らねば!
 冥闘士が姿を現した。一人…二人…三人。三対一か。女神に託された任務。子どもたちの一人たりとも手にかけさせるものか。
「グリタリングサークル!」
 ティソナは小宇宙を燃やし、子どもたちの周りを光の壁で囲む。
「この壁から出ちゃ駄目だよ。あいつらはこれにさわれないからね」
「あ…!」
 後ろで切羽詰った声がする。はっとして横を見ると、道端の何かに気を取られて少し離れていた女の子が目に入った。光の壁の外に、恐怖の表情を浮かべて立ち尽くしている。じりじりと冥闘士が近寄ろうとしている。
 「大丈夫だよ」ティソナは努めて平静な声で少女に話しかけた。「今、ちょっとだけここの光のカーテンをあけるから、そうしたらすぐ飛び込んでね」
 少女がうなずく。隙ができるが仕方がない。
「今よ!」
 ティソナはわずかに光の壁に隙間をあける。リーダー格の少年がすかさず手を引いて少女を引っ張り込む。
「よし、うまいよ!」
 ティソナは少年の咄嗟の動きを褒める。だが冥闘士もその間を狙って技を放ってきた。
「ぐっ…!」
 光の壁を維持しながら隙間をあけるという微妙な作業の状態では防御がままならなかった。左腕に衝撃が走り、だらりと垂れ下がる。
(骨、やられたな)
 子どもたちは全員光の壁の中に入った。だがこの状態で、光の壁を維持しながら、冥闘士に攻撃をかけられるか…? 自分の直接攻撃は間合いが短い。壁の中に入っていては撃てない。
「みんな、そこから動いちゃ駄目だよ」
 ティソナは安心させるように言うと、光の壁の中に踏み入った。自分の作った光が体を焼く。構わずティソナは進み、光の壁の外に出る。
「こいつ、出てきたぜ。片腕も使えないのによ」
 冥闘士の一人が笑う。腕一本やられたぐらいで聖闘士が引き下がるか…! ティソナは黙って右腕を構える。まだだ…。全員がもっと近くに来てから…。一人が飛び出しながら技を放って来る。ティソナは素早くステップを踏むように避ける。今だ!
「クリスタルカットラス!」
 間近に迫っていた三人の冥闘士に技があたる。二人は倒れ伏したが一人は肩をかすっただけだった。しまった! 相手の技が飛び、脇腹に火のような痛みが走る。ティソナが倒れると、勝ち誇ったように冥闘士が近寄ってきた。ティソナは起き上がりざまに敵の懐に飛び込む。それを予期していなかった相手の胸元に手刀が埋まる。
「…たばかったな…」
「油断したね」
 敵がどうと倒れる。ティソナは慎重にあたりを探った。怪しい小宇宙は感じない。確認して、子どもたちの周りの光の壁を解く。
「お姉ちゃん!」
 子どもたちが駆け寄ってくる。
「…大丈夫」
 まだ任務は完了していない。ティソナは脇腹に小宇宙を集めて傷をふさぐ。皮一枚の差だったが、内臓まではやられていない。
「さあ、行こうか。また悪い奴らが来ないうちにね」

 子どもたちは無事に隣街に送り届けた。怪我を心配する子どもたちや慈善家に心配ないと答え、ティソナはそこを後にした。聖闘士が長居して冥闘士を引き寄せるわけには行かない。早く女神に報告して安心させてもさしあげたかった。ずいぶん心配なさっていたようだったので。ちょっといろいろあったけど、子どもたちは無事に送り届けました…。
 ようやく聖域にたどり着いた。瞬間移動の効かない十二宮を見上げると眩暈がしたが、努めて考えないようにして階段を上り始めた。気がつくと磨羯宮まで来ていた。そう言えば今日はエルシド様はいらっしゃっただろうか? 頭が働かない。
「ティソナ…!」
 振り向くと聖衣をまとったエルシドが立っているのが見えた。ああそうだ、今日はエルシド様も任務があるんだった…。
「アテナ様からの任務、完了しました。報告に上がります」
 エルシドは何か言おうとしてやめ、うなずいた。
「わかった。だがちょっと待て」
 エルシドが近寄って来て、ティソナの脇腹に手をかざす。いつの間にかまた開きかかっていた傷口に癒しの小宇宙が注がれる。
「ありがとうございます…」
 それ以上何か言う余裕がなかった。ティソナは残りの階段へ向かった。
 教皇の間に入ると、女神が息を呑み、教皇が目を瞠ったのがわかった。ああ、そう言えば、血で汚れた服のまま、水場で顔も洗わずに来てしまった…。
「南の冠座のティソナ、ただ今帰還いたしました。途上三名の冥闘士に遭遇しましたが退け、子どもたちは無事に送り届けました」
 ひざまづいて報告の口上を述べた。ふいに目の前が暗転した。だが床は感じられなかった。

「あ…」
 女神は玉座から立ち上がりかけた。が、エルシドが物陰から素早く進み出て意識を失ったティソナの体を支えていた。
「大丈夫なのですか?」
「今までの出血と気が緩んだためであろう。傷も命にかかわるものではない。治療してしばらく休めば大事はなかろう」
 教皇がティソナの状態を見て言った。女神はほっと息をつく。
「冥闘士が三人も…。単なる引率のつもりだったのに…私が無理を言ったばっかりに」
「アテナ様の願いを叶えるのは我ら聖闘士の務めです。お気を煩わせませぬよう」
 エルシドが静かに言った。
「ところでお前もこれから任務に行くのだったな?」
「はっ」
「ではティソナは磨羯宮で休ませておくがよい。出かけるのならちょうど良かろう。ここには怪我人を休ませる所がないからな。磨羯宮なら近いゆえ、下の施療所に運ぶよりも体の負担は少なかろう。あとで治療師を呼んでおく」
 エルシドは部下への配慮に頭を下げる。
「…ティソナも磨羯宮ならゆっくり休めよう?」
 女神に聞こえないように言った教皇の言葉には答えず、エルシドはそっとティソナを抱え上げると自宮へ向かって降りて行った。

 暖かい小宇宙を感じる。ティソナは目をあけた。見慣れた天井。ここは…磨羯宮?
 はっとして起き上がろうとしたティソナをそっと押しとどめる手があった。一見小さな、だが大いなる力を秘めた手。
「アテナ様…」
「起き上がらないでください、ティソナ。どうぞそのままで」
 女神が癒しの小宇宙を送りながら枕元に座っていた。
「申し訳ないです、アテナ様…もう大丈夫ですから」
「そう、なのですか」
 女神はやや心配そうながら小宇宙を送るのを止める。傷には自分より前に、エルシドが送り込んでいた癒しの小宇宙を感じた。素っ気ないように見えるが、深く気遣っているその証。折れた腕は治療が施され、顔色もさっきよりはよくなっている。女神は少し安心した。
「今度のことは…ありがとうございました。それほど切迫していたとは思わないで、貴女には大変な思いをさせてしまいました」
「いいえ、お礼など。アテナ様からの任務を賜ることは聖闘士として光栄です。私たちの務めですから。ちょっと手際が悪くてご心配をおかけしました。どうかお気を煩わせませぬよう」
 同じ言葉。聖闘士としての。二人の間の絆が感じられ、サーシャは心が暖かくなるのを感じた。


---


黄金聖闘士は光速の動き!ができるかどうかはともかく(拳は光速で撃てるけど)、エルシド様素早いです。そこはまあ、お約束。
教皇様がちょっとハクレイさんみたいだ。

サーシャちゃん、もといアテナ様は二年前だと12歳なんだよなー。ライミ騒動があった頃。まだ胸はでかくないけど、アテナ小宇宙はもう出せる頃。
サーシャちゃんが沙織さんみたいな感じだったら、この後、「ところでティソナ、エルシドは優しいですか?」とか目をきらきらさせて聞きそうだけど、サーシャちゃんはやらないかなあ。

初めは教皇の間に寝かせるべき?と思ったのだけど、アテナ様の寝台は譲ってくれても石だし、教皇の間には客用寝室とかなさそうだし。セージ様は普通にベッドで寝てる? お年だし…でもジャミールの人はわからんけどなあ。

 

PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カウンター
プロフィール
HN:
MCBT
性別:
非公開
自己紹介:
8月20日獅子座生まれ。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。

何かありましたら
mcbt★br4.fiberbit.net
まで(★を@に)。
ブログ内検索
最新トラックバック
最新コメント
アクセス解析
フリーエリア
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]