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エルシドの手は優しい。だがその大きな優しい手は、敵に対しては恐ろしいまでの凶器となる。斬り裂く拳も、手刀も、自分の比ではなく鋭い。その手が、今は優しく自分の髪を梳く。
その手に比べれば余りにも小さく頼りないけれど、自分の手もまた凶器。つい最近の戦いを思い出す。その手が肉に食い込んだ感触がよみがえり、ティソナはぞくりと身を震わせた。
「どうした」
エルシドが静かに問う。ティソナは黙って頭を振る。初めて人を斬ったときの、あの胸の悪くなるような思い。人の死を目の当たりにするのは初めてではなかった。だが自分の手で人を殺すことはそれとは全く違う。以来、その手に刻まれてきた感覚。守るために殺す、というこの因果な務め。忘れてはいない。しかしあのとき、きっと自分は阿修羅のような笑みを浮かべていただろう。それを見た者は誰もいなかったとしても。ティソナは手を持ち上げて光にかざしてみる。血に染まった手。もちろんそれは今は見えないけれど。その報いは受けよう。流した血の分だけ。それが聖闘士の務めだから。
思い切ってしまえば心は落ち着く。手を下ろし、エルシドの髪を梳く。その感触に我に返って、ふっと笑みがこみ上げる。
「なんだ?」
「エルシド様、案外、髪、長いんですね」今度はティソナも普通に答える。「私よりも絶対長いですよね」
聖域では男性でも髪の長い者は多い。黄金聖闘士の中ではエルシドの髪は短いほうだ。それでもショートにしているティソナよりは長いかもしれない。
「そうか?」
エルシドの大きな手が優しく自分の髪を撫ぜる。激しい行為と、優しい愛撫。多くを語らぬ言葉と、感じられる熱い思い。
その手のぬくもりが、今は嬉しい。
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再チャレンジしたけどやっぱり暗いー。何だかそういう気分なのだろうから、そのままにしておくべきなのだろう。
書いておきたいものでもあったし。
「阿修羅」って…いや日本語に「翻訳」してあるんで、きっとヨーロッパにあるそれに類するもののことを言ってるんだよ。
エルシドの髪って襟足のところ、結構長いと思う。ま、黄金聖闘士の半分以上はハンパなく髪が長いので(双子とか、ときどき伸び縮みする人もいる)、あれくらいは「長い」のうちに入らない気もしますけどねー。
で、彼らはどうやって髪のお手入れをしているのだろーか。まさか普通に梳ってたらすごーく時間がかかるよね。双子座とか、蠍座とか。エルシドも自分で髪切ったりしているのだろうか?
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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