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シジフォスが珍しく修練場にいた。それも聖衣をまとったまま。矢を放つ。浄化の光のような小宇宙があたりに満ちる。
ティソナが他の者たちと同じく、そのさまを感嘆の眼差しで眺めていると、ふと顔を向けたシジフォスがティソナを手招きした。
「シジフォス様、御用ですか? …あの、大丈夫ですか?」
近寄るとシジフォスがひどく疲れたような顔をしていたので、テイソナは遠慮がちに聞いた。
「ああ、何でもないよ。大丈夫。ところで、ちょっと頼まれてくれるかな。エルシドに、明日は一日オフにしてゆっくり休んでくれって伝えてくれ。今日はハードな一日だったから。さっき言い忘れちゃってね」
シジフォスは苦労して笑顔を作りながら言った。
「わかりました。シジフォス様もお休みになられては…?」
「ああ、俺はもう少し『汚れ』を落としておきたいから。他の者には近づくなって言っておいてくれ」
シジフォスは再び弓を構えながら言った。
「エルシド様?」
磨羯宮に声をかけながら入った。奥で人の気配がするが、珍しく返事がない。そっとのぞくと、すわっていたエルシドが顔を上げた。
「お前か」
先ほどのシジフォスと同じく、憔悴した顔だった。
「お疲れのところ、申し訳ありません。シジフォス様が…」
伝言を伝えるとティソナは邪魔をしないように素早く引き上げようとした。だがエルシドが後ろから抱いてティソナを引き止めた。
「エルシド様…」
エルシドは無言でティソナを抱きしめ、生きている実感を味わっていた。
「いいか?」
いつもの、許可を求めるエルシドの言葉。
「…はい……、あ…」
返事を待つのももどかしいように、エルシドの唇がティソナの首筋を襲う。抱きしめる腕に力が入る。
いつもよりずっと激しい行為。それも一度ではなく。生を確かめるようなその行為に、ティソナも懸命に応えた。
「すまなかった。大丈夫か」
「大丈夫、です…」
気づかう言葉にティソナは目を開ける。もういつものエルシドの穏やかな顔だった。
「私でお役に立てるのなら…」
ティソナは微笑み、その体を寄せた。命のぬくもりを、少しでも相手に与えられるように。
「お前を寄越したのはシジフォスか…。まったくあの人には敵わんな…」
エルシドは横に眠るティソナを見やりながら、苦笑混じりにつぶやいた。
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タナトスの仕掛けたものにふれたので、「死」へ心が傾きそうになるとかそういう感じ。それに対するには…。
援護の方がダメージが大きいよね…この場合は主に心への。ということを察したシジフォスの「配慮」。やっぱりバレバレだね。
何があったのかティソナは聞かない。エルシドもきっと言わないと思う…
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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