「癒し」

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「死の罠の街」の後話その２。
シジフォスと女神。最後にエルシドも（×オリキャラヒロイン）。

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　引っくり返って上を見ていた。他の者には近づくなと言っておいたこともあるが、あたりにはもう誰もいない。すっかり日が暮れ、夜空には星が瞬いていたが、いつもなら美しく思うそれにも、今は心が動かない。襲ってくるのはどす黒い疲労感と空虚な無気力感。
　どのくらいそうしていただろう。あるものを感じて、はっと上半身を起こした。
「シジフォス！　どうしたのですか…！」
　女神が修練場のはじに転がっていたシジフォスを見つめて立っていた。
「アテナ様…なぜこんな時間にこんなところに…」
　そう言えば、今日は女神自らが慰問に出られていて、夕刻教皇の間に報告に行ったときはいらっしゃらなかったのだった。
「泣いている子どもを慰めていたら、すっかり遅くなってしまって」
　そうだ、この方はすでに…ご自分もまだ子どもの域を出ていないというのに、あふれる愛で地上に希望をもたらす女神なのだ。それに引き換えこの俺は、泥溜まりに転がるただの人間。
「近づかないでいただきたい…俺に触れればその指先が汚れましょう」
「また何かを守って戦ったのですね…魂がそんなに傷つくほど」
　女神は構わず近づき、泥だらけのシジフォスの頬にふれた。そこから暖かい小宇宙が流れ込み、シジフォスの内に広がる。身の内に刻まれていた「死」の傷が癒されていく。
「アテナ様…ありがとうございます…お見苦しいところをお目にかけました」
　シジフォスは居住まいを正して女神の前にひざまづいた。
「いいえ。皆が元気で笑っていてくれれば、私も嬉しいですから」
　女神は微笑んだ。
「あ、貴方がこれほどなら…」
　女神は心配そうな顔になって十二宮の方に目をやり、小宇宙を探った。
「あ…」
　予想に反して、磨羯宮から感じられる小宇宙はとても穏やかなものだった。そしてその傍らにはもう一つ。
「ああ、エルシドは大丈夫ですね…良かった」
　シジフォスは立ち上がった。
「参りましょう、アテナ様。教皇の間までお送りいたします」
「ええ」
　暖かな女神の小宇宙と、付き従う黄金の輝き。ひそやかにそれらが通り過ぎ、ややあって黄金の輝きのみが再び通っていったのを、エルシドは感じるともなく感じていた。

　翌早朝、エルシドが修練場にいると、シジフォスが修練着姿で降りてきた。
「早いな」
「貴方も」
「いや、俺もまだまだ修行が足りないと思ってね。あの程度でダメージを受けるようではいかんな。アテナ様のお手を煩わせてしまった」
「そうだったのか。貴方は大丈夫なのかと思っていたが」
「いやいやいや。そうだ、久しぶりに手合わせといくか」
　シジフォスはにやりと挑むように笑った。エルシドも微笑みながら返す。
「お望みなら」


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射手座の技は魔を祓う技、的なイメージがあります。「生」で「死の呪い」のようなものを祓うのにシジフォスは技を撃っていましたが、人のぬくもりに触れることでそれを祓っていたうちのエルシドさんは、シジフォスが高尚な感じがするのに対して俗っぽい？　ということでシジフォスも破魔の技だけでは祓えなかったということになってもらいました。シジフォスならアテナ様だよね、でも恋人関係って訳にはいかないのでこんな感じで（特にこのときアテナ様12歳だし）。
いや、単にシジフォスをアテナが癒す、ていうのもやりたかったのだけど、教皇の間で会っちゃうと、女神が二人とも癒しちゃうと思ったのでこういう形に。

エルシドはシジフォスとは逆に翌朝技を撃ちに来ていますが、呪いを祓うというより、ダメージを受ける自分の未熟さに対して更なる鍛錬に来たということで。ティソナには「お前はゆっくりしていろ」とか言って出てきたんだよ、きっと。
…アテナ様にもばれたぜ（笑）。でもアテナ様は自分の聖闘士の幸せは祝福して喜んでくれるよね！

最後はロスシュラ…じゃなかった、仲の良いシジ＆エルで締めてみました。
そして「手合わせ」に続く？
まだ観客いなさそうだから、別の時かな。