黄金交流話、デフテロス編。
「乱」を受けての話になりますが、原作設定のみでも読めます。
オリキャラは出ません。
エルシドとデフテロス、他一名。
「残されたもの」への拍手ありがとうございます!
黄金話はやはり需要があるんですかね。いや、双子関連だからか?
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単独任務の帰り。噴煙を上げる山が見えた。傷ついた聖闘士がその身を癒しに行く地、カノン島である。そう言えば、とエルシドは先日教皇が言っていたことを思い出した。双子座を受け継いだアスプロスの弟がカノン島にいると。
島に降り立つと、聖闘士には馴染み深い土地のため、行き会った村人は皆、黄金聖闘士の姿に恭しく礼を取った。その男がいる場所を正確には知っているわけではなかったが、集落の中にはいないだろうことは推測できた。山の方へ向かうと、案の定、小宇宙が感じられ始めた。だが一人ではない。療養目的ではなく、近頃住み着いた「鬼」のもとへ武者修行に行く者がいるとも聞いたが、これは…。
山の中腹あたりに、二つの人影があった。
「お前で九人目か。いちいちご苦労なことだな」
浅黒い肌の男が吐き捨てるように言った。面差しは確かにアスプロスに似ているが、まとっている雰囲気は、あの優雅とさえ言えたアスプロスとはかなり違う。否、わざと違えようとしているのかもしれない。
「まあそう言うものではない。旧友よ、皆、君を心配しているのだよ」
そこにいたもう一人の人物、乙女座の黄金聖闘士アスミタが言った。アスミタはあのとき教皇に呼ばれて、あの場を収めるのに一役買ったという。おそらく現在の黄金聖闘士の中では一番この男と縁が深いだろう。
「では教皇の用向きは確かに伝えたぞ。さて、私は帰るとしよう」
アスミタは言うと、ふわりと宙に浮き上がるようにして姿を消した。
エルシドはしばらく黙ってその男の横顔を見ていた。
「何だ、わざわざ品定めに来て何も言わんのか? 裏切者の弟の顔を見に来たのだろう?」
乱暴な物言いをしているが、今は穏やかな小宇宙が感じられるだけだった。
「何故貴方はここにいるのだ?」
「知れたこと。アスプロスがいずれ蘇ってきたときに、再び葬るための力を求めているだけよ」
激しい口調だった。穏やかだった小宇宙が一瞬熱く燃え上がるのが感じられる。信頼していた兄弟と相争う仲になってしまったことへの思いは誰にも踏み込めないものなのだろう。アスプロスは死の間際、己に幻朧魔皇拳を撃ったという。ハーデスは死を操ることができる。アスプロスが蘇って聖域に仇なしに来るのは十分ありうることだった。
「謀叛人の罪はその兄弟たる俺の罪も同然。あいつを倒すのは俺の役目だ」
「…だが貴方はアスプロスとは違う、デフテロス」
エルシドが言うと、デフテロスがこちらを向いた。
「お前に何がわかる?」
「確かに俺にはわからないかもしれん。だが貴方の小宇宙に曇りがないことはわかる」
「!」
デフテロスは黙りこみ、その横顔に溶岩の照り返しが映えた。
「何か不自由していることはないのか?」
「別に、ない」
エルシドの問いにデフテロスはそっけなく答えた。
「そうか。邪魔をした。何かあれば呼んでくれ」
そして、そのまま別れた。
「どいつもこいつも似たようなことを…」
一人になったデフテロスは宙に向かってそっとつぶやいた。
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押しかけ「旧友」のアスミタを除く10人のうち、来てないのは誰かわかるでしょうか。
(アルバフィカです。彼は来ない気がするので。)
アスミタは教皇のお使いと称してときどき旧交?を暖めに来ているということで。
後半、この二人にどんな会話が成り立つのかと考えてしまいました。
黄金さんたちはもちろんデフテロスの人となりを見極めにも来ているのですが、会えばきっとわかって「お前は悪くない」とか「何か用があったら言ってくれ」とか「これからは仲間として共に戦おう」的なことを、ストレートに口には出さずとも思ったりしてるといいなあと思いました。うちの黄金さんたち良い人過ぎ?
二人称にすごく迷いました。エルシドは目上には丁寧に呼びかける方と思うけど、一歳しか違わないんだよねー。無印ではサガ・カノンとシュラは五歳あいてたけど。ただ、アスプロスに対してはシジフォス同様先輩として「貴方」呼びする気がします。アスプロスは多分かなり幼い頃から聖域で修行してて、エルシドが来た頃は結構実力に差があったんじゃないかと思ってみたり。
デフテロスはその双子の弟だから、一応同じように呼んでみたと。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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