双子座は二人とも出ないけど、こんなことなかったかなあ、という双子話。
エルシド視点だけどエルシドも空気。
最後にちょっとだけ部下入りますが、オリキャラは出ません。
(アニメ設定取り入れで部下名前変更、カテゴリー変更―2011.4.24)
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教皇の間ですさまじいまでの小宇宙がはじけたのを感じた。自宮にいたエルシドは磨羯宮を飛び出した。何があった――?
教皇の間に着くと、自分より上の宮のアルバフィカとデジェルがやはり駆けつけてきていた。そして乙女座のアスミタがいた。めったに自宮から出てこないその姿が今ここで見られることをエルシドはいぶかしく思ったが、あたりの状態はただならぬ事態があったことを示していた。教皇は玉座に座っていたが、その顔には明らかに誰かと争った痕があった。そして裂けた壁布と、そこに飛び散った夥しい血。
「お師匠っ…! 何があった!」
マニゴルドが飛び込んできて、血相を変えて叫んだ。次々と黄金聖闘士が集まってくる。ただ一人を除いて。
「皆…集まったか」
沈痛な面持ちで教皇が口を開いた。由々しい出来事が語られた。双子座の黄金聖闘士アスプロスの謀叛。隠されていた弟の存在。そしてアスプロスの死。
「私が間違っていたのかもしれぬ…『凶星』は弟ではなく兄の方だったのかもしれぬ。二人の運命は他人には見きわめきれぬものだったようだ」
黄金聖闘士の謀叛。それも最強の呼び声の高い、心技体磨きぬかれていたはずの双子座が、自らの心の闇に堕ちるとは。
「双子座の聖衣は弟のデフテロスに与えた。十二宮には戻らぬかもしれぬが、あれの小宇宙も実力も兄には劣らぬ」
最強の双子座が二人。その彼らが殺しあわねばならなかったとは何たる皮肉。
「教皇位については当分現状のままとする。シジフォスはすでに辞退しているゆえな。だが私は、いずれ、彼がその気になってくれればだが、デフテロスに譲りたいと思っている」
一同はざわついた。教皇は言葉を継いだ。
「あの男は『凶星』として忌まれていたにもかかわらず、正しい心根を失わなかった。彼にとってすべてであった兄を討つことができたことでもそれは証明されている。疑う者は確かめに行くがよい。彼はやがて来るであろう戦いに備えてカノン島にいる」
教皇は深い息を吐いた。
「この件については詳細はここだけの話とする。もちろんアテナ様にはすべてご報告申し上げる。その他には双子座の黄金聖闘士は戦いで散った、それのみを伝える」
「双子座の黄金聖闘士のアスプロス様、亡くなったって本当ですか?」
ラスクが聞いてきた。
「ああ。本当だ」
エルシドは表情を変えずに答えた。
「あまりお見かけしたことはなかったですけど、次期教皇候補って言われていた素晴らしい聖闘士だったんですよね…聖戦も厳しくなってきたんですね」
聖闘士になったばかりのラスクは、自分の率直な感想を語っていた。ツバキはちらりとエルシドの方を見た。だがエルシドはそれ以上説明しなかった。揃ったばかりの黄金聖闘士が欠けた。同じ黄金聖闘士としてエルシド様は何を考えておられるのか。ツバキは動かぬエルシドの横顔を見つめた。
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テンマは「アスプロスの乱」のことを知らないみたいだった。「カノン島の鬼」が誰かも。
「アスプロスの乱」はあんまり聖域一般には知らされなかったのでは? 黄金聖闘士の謀叛なんて、聖戦が本格化するときに公になったら士気下がるしねー。死ぬのはまあ聖戦中の聖闘士稼業ではよくあることだし。
小宇宙を感じ取れる者は何かあったとか気づくんじゃないのか?というところから発想。でも黄金さんたち以外で小宇宙を感じ取れる者はいないのか?
黄金聖闘士は当事者のアスミタ以外にデジェルも童虎もデフテロスのことを知ってるっぽかった。
そしてデフテロスは教皇しか知り得ないはずのアテナの聖衣のことを知ってた。アスプロスがスターヒルに忍び込んだときは止めてたのに、童虎に対してるときは自分が知っているのは当然のことのように話していたので、デフテロスは内々に教皇の指名を受けていたのじゃないかなあ、という妄想から。
アスミタさんが教皇の仲介役としてときどきカノン島へ行って親交を深めていたとかだったらいいのに。
アスミタの前でのデフテロスの顔がすごくきれいで見とれました。
エルシドは「乱」についてきっと何も言わないと思う。もし詳しく発表されていたとしても。
ラスクくんは我が家では天然なので全然気づいてないと思うけど、ツバキは「何かあったな」って感づいてるんじゃないかな。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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