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空高く輝くもの。
目標の一つであったし、尊敬もしていた。
だが、しかし。
その三人は三者三様だった。
三人とも卓越した力と技を持ち、人物も優れていた。自分と年齢差がそれほどあるわけではなかったが、彼らはずいぶん幼い頃から聖闘士になるべく修行をしていたのだろう。聖域に来たころはかなりの差を感じたものだ。やがて三人は相次いで黄金聖闘士になった。射手座、牡牛座、双子座である。黄金聖衣をまとった三人の姿は眩しいばかりだった。すでに黄金聖闘士の候補生となっていた自分にとってさえ。三人はそれぞれ異なる太陽のようだった。射手座のシジフォスは皆を守り導く者として、牡牛座はそばにあって暖かく育ててくれる者として、そして双子座は空高く輝き照らす者として。
双子座のアスプロスは心技体とも磨き抜かれた、素晴らしい聖闘士だった。黄金聖闘士になった三人のうちでは最も若かったのだが、全くそれを感じさせなかった。実際、自分とは一つしか年が違わないのだと知ったときは驚いたものだ。
眩しい太陽の一つ。だが他の二人が素晴らしさとともに親しみやすさをも備えているのに対して、一般の者には双子座のアスプロスはあまりに輝かしくて手が届かないように感じられる存在だった。どんな者にも優しく微笑み接する男だったが、シジフォスやハスガードと比べると、どこか遠く感じられるのはなぜなのか。憧れ、仰ぎ見ても、天高くにあって、決して届かないものとして。
山羊座の黄金聖衣を拝領した日。
「おめでとう、これで君も我らが同僚だな」
アスプロスがにこやかに言った。
シジフォスも心から嬉しそうに、ハスガードも豪快に笑いながら、祝福の言葉を述べてくれた。彼らの言葉はそのまま心に届く。だがアスプロスの笑顔には眩しさを覚えるものの、やはりどこか遠かった。
その心に闇が生じたのはいつ、そして何故なのか。今でも時折、その答えの出ない問いが心に浮かぶ。
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エルシドはアスプロスよりシジフォス寄りってところもあったと思うけど、それゆえに特にシジフォスと比べて、何となくアスプロスにどこか違和感を感じていたりしなかっただろうかという妄想。
それでも素晴らしい聖闘士だとは思っていて、「正義の聖闘士」から逸脱してしまったのは何故なのかと疑問に思っていたのではと。エルシドは杳馬の闇の一滴を知らないからね。
先輩三人をそれぞれ異なった形で「太陽」に見立ててみたかったので。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
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