黄金オールスター手合わせ。(0) (1)の続き。
第2戦、マニゴルドvsデジェル。
オリキャラは出ません。
ろん様からのリクエストで、発端以外、前半はろん様の作です。
デスマスクとカミュって接点なかったよね。二人ともハーデス十二宮編で蘇ってたけど「組」が別だったしな。マニゴルドとデジェルは接点ないようでいて…。
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「よし、それじゃ次は誰がやる?」
「わたしとやらないか?」
思いがけず、デジェルがマニゴルドに呼びかけた。
「へっ? …まあ、いいぜ」
「さあて、始めっか」
闘技場に立ったマニゴルドはそう言うと、手を組み合わせて骨を鳴らした。やや離れて対峙したデジェルは、その様にうすらと笑って口を開いた。
「嫌がっていたわりには、ずいぶんと乗り気のようだな」
「ヘッ、巻き込まれたモンはしょうがねェ。まあ滅多にない機会だ、楽しまなきゃあ損ってやつだろ」
マニゴルドは口角を上げ、手の無益な動きをふと止めた。真顔に戻ったデジェルがぴくりと眉を上げる。
一つ、一つ、また一つ。
いつの間に、それともこの一瞬にか。主にレグルスがしたたか打ち砕き、程よく傷付いた闘技場にはどこか似合う燐気の玉が、あちらこちらに浮かび上がっていた。
「お前、わりとトロいのな」
マニゴルドの笑みが深くなった。青白い玉が、青白い炎へと次々に変貌する。
「積尸気鬼蒼焔!」
鋭い叫びを合図に、ゆらゆらと揺れていた炎がいっせいに牙を剥いた。
「おい、マニゴルド……!」
最前列の席から観戦していたシジフォスは、思わず腰を浮かした。各自遠慮無く打ち合うようにとは言ったが、これはあくまで鍛錬だ。闘技場の損壊はどうとでもなろうが、取り返しのつかないことを起こしてはいけない。
「待てよ、シジフォス」
飛び出そうとしたシジフォスの胸の前に、留めるように腕が突き出された。隣に座らせられていたカルディアだ。それまでぶつくさと文句を垂れていた彼だが、今はその表情をこれまでに無いほど活き活きとさせて、友人の窮状に目を凝らしている。
「よく、見てろ!」
マニゴルドの目に、闘技場に集まった他の黄金聖闘士の目に、それはまるで時が止まった世界のように映った。デジェルに向かっていった火球は残らず静止し、その揺らめきだけが時の流れを実感させる。まっすぐ横に腕を差し出したデジェルの目は閉じていた。
「──カリツォー」
一つ、一つ、また一つ。初めは目視できなかった小さな氷のリングは数を増し、やがて青い炎をまるごと封じ込めた。
「氷の闘技の基本は原子の動きを止めること。──それがたとえ、死界の鬼火であろうとな!」
合図のように拳が握りこまれると、もはや氷の球となった炎は次々と砕け散った。光を受けてとりどりに輝くそれらに、マニゴルドはひゅう、と口笛を鳴らした。
「キレイなモンだね。……小細工は通じないってか」
「その通りだ。……行くぞ」
握り込んだ拳を、デジェルはゆっくりと引いた。
「ダイヤモンドダスト――!!!」
氷の結晶が舞い、凍気が襲いかかる。
「危ない危ない」
マニゴルドがひらりとよける。
「じゃあこっちからも行くぜ…アクベンス!!!」
マニゴルドが飛びかかるのをデジェルはジャンプしてかわす。
「結局これしかないようだな」
二人は今度はまともに拳を繰り出し、お互いの拳をお互いの掌底で受け止めた。
「これは…千日戦争の形!?」
見ている者たちがどよめく中、二人は組み合ったまま力を込め合っていた。
「貴方に一度聞いてみたかったのだが」
「ああ?」
「貴方は教皇の弟子だろう? 私も星見の助手を務めているが、教皇はご多忙だ。君はお手伝いはしないのか?」
「俺のやることじゃねえな」
「何…」デジェルの顔つきが厳しくなる。
「だから俺の柄じゃねえって言ってんだよ。俺は自分のできることはわきまえてる。お師匠の技と聖衣は継いだが教皇様の他のお仕事は俺の手には余る。得意じゃねえことに手を出したらかえってお師匠の邪魔になるだろうが」
「ああ、そういうことか」きつくなっていたデジェルの顔がふっと緩む。
「では、」
デジェルは手を離して後ろに飛びすさった。腕を組み合わせて頭上に振り上げる。
「そろそろ決着をつけようか。オーロラエクスキューション!!!」
あたり一面が凍りつきながら砕け散る。と、マニゴルドの姿が消えた。少し離れたところにふいに姿を現す。
「あいつ、技を避けるために積尸気で自身をいったん黄泉比良坂に飛ばしたな」
シジフォスがつぶやいた。
「やれやれ、やっぱりこういうのは俺には向かないぜ。相手を黄泉比良坂に飛ばしたりしたらまずいんだろ?」
「まあ、そうだ」シジフォスがうなずく。
「じゃ、今日は引き分けってことにしといてくれや」
マニゴルドはさっさと観客席の方へ引き上げにかかっていた。デジェルもやや消化不良気味の表情ながらかかげていた腕を下ろした。
「ま、いいだろう。よし、次は…」
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「実況は射手座シジフォスさん、解説は蠍座カルディアさんと現場のお二人がお送りします」とやりたかったけど削ったとのことなので、カルディアくんあんまり解説してません。
…しかしシジフォスさん、「闘技場の損壊はどうとでも」じゃ、まずいっしょ。
デジェルさんはセージ様を尊敬しているんじゃないかなあと思っての発言です。13巻の追加イラスト、かわいいですよね。弟子のマニゴルドさんがちょっとうらやましかったりしないかなあ、と。
デジェルさんの使う二人称はカルディアくんには「お前」、ユニティくんには「君」または「お前」、セラフィナさんには「貴方」で、マニゴルド相手にはどうするか迷いましたが、年上なので「貴方」にしてみました。別の話でエルシド相手にも「貴方」にしたので。
2008年頃に、ひょんなことで車田正美の漫画『聖闘士星矢』にはまる。漫画を読了後、アニメもOVA・TV版・映画版と観て、ギガントマキア・ロストキャンバス・エピソードGなどのスピンオフ作品にまで手を伸ばす。
トータルでの最愛キャラは車田星矢の黄金聖闘士、双子座のサガ(ハーデス編ほぼ限定)なのだが、このところ何故かロストキャンバスの山羊座の黄金聖闘士エルシドにはまっている。全然タイプは違うのだが、格好良さに惚れた。
二次創作は読むことはあっても書くことはないと思っていたのだが(いやかつては読むこともしなかったのだが)、とうとう禁?を破ってこんなことに。
このサイトは二次創作に特化させた「エルシド別館」なので、ロストキャンバスの新刊の感想等はこちらの「本館」のブログのカテゴリー「聖闘士星矢」を参照されたい。
何かありましたら
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