「透明なもの」

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「玻璃の欠片」のエルシドサイド（×オリキャラヒロイン）。


「聖域の平和な一日、あるいは闘技場の受難（２）」への拍手（×３！！）、ありがとうございました！
更新、頑張ります。

 

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　食器を片付けながら話していたティソナの声がふと途絶えた。
「まさか…」
　小さな声が漏れた。その背がこわばり、手が止まる。
「ティソナ？」
　答えはない。食器棚の中の一つのグラスを手にじっと動かない。細かい細工の施された、だが何の変哲もない玻璃のグラス。
「どうした？」
「いえ…なんでもありません」
　そうしてこちらを向いた顔は透き通るような笑顔。頬に微かに残る涙の跡。不意に開いた傷口を覆い隠す、きれいな透明な笑顔。
「そうか」
「はい」
　目を伏せぎみに、静かな笑みを浮かべながらも閉ざされた口元。ならば聞くまい。
　エルシドがそっと抱き寄せると、ティソナも自分から身を寄せた。穏やかな笑顔の中、ふだん見られない透明な瞳が、潤いを含んで微笑みかけてくる。聖闘士として生きることを決意したとはいえ、ふと思い出すこともある。今ともにいることで、その愁いが和らげられるのなら。

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「なんでもない」はなんでもなくないけど、そう言われちゃったら聞けないよね。

磨羯宮においてある食器は女官さんとかが適当にそろえてくれるんだよね、きっと。

エルシドで同じような場面を書こうかとも思いましたが、エルシドは何か思い出すことがあったとしても、きっと顔や態度には出さないよね、ということで。